私の夫が15年来の病的な飲酒からめざめ、断酒を決意し、酒を断ちましてからもう4年になります。
夫の飲酒中、私は断酒会の存在も知らず、ただ不安と焦燥に明けくれ、当時の私の言動のすべては今にして思えば、夫の病気の進行を助ける結果になっておりました。
無知とは全く恐ろしいものです。
夫の断酒と同時に私も断酒会の存在を知り、夫ともども会に出席しまして、多くの先輩の体験談や奥様たちのアドバイスなどに耳を傾け、パ ンフレットを読んでおりますうちに、断酒会の持つ意義とその力の大きさにすっかり魅せられまして、今では 断酒会は、私の生活と切り離せないものになってまいりました。
そして生活の反省、勇気、知恵を凡てそこから得ているような気がいたします。
この小文は、私が会を通じて学びましたことを、私自身の反省とまとめの為に記したものですが、幼ないお子様をお持ちの奥様方や、商売その他で断酒例会に出席しにくい方たちにもお読みいただきまして、酒害による苦しみや悲しみから一日も早く脱け出して下さるためのお役に立てますよう願っております。
アルコール中毒の治療は、病院に任せておけば安心できる他の病気とは全く異なっています。
治療の第一段階は家族−ことに患者に対して最も近い、いつも傍にいるものから始めなければなりません。
即ち、妻である私達から治療を始めることです。
例え自分の夫であっても、人の気持を変えるということは大変ですが、自分の気持を変えることは、勇気を持てば案外たやすく出来そうです。
私達、アル中の夫を持つものは、誰でも何とかして夫を立ち直らせたいと考えています。
それでいて何も行動を起さないことは、普通無知か勇気がないか、極度の混乱状態にあるのかの何れかでしょう。
そして恐ろしいことは、何もしないでいるうちに、いっの間にやら、その状態に負け、妥協し、さらにアル中の都合の良いように利用されているということです。
その結果、患者の病気はどんどん進行してゆきます。
言いかえれば、私達は知らぬ間に夫の病気の進行に手をかしていることになります。
これはとんでもないことです。
まず私達が態度を変えて、アル中よりもうわてになり、決して利用されず、正しい知識と勇気をもって、酒にマヒしている夫の人間性をめざめさせなければなりません。
アル中本人の自発的断酒以外に、アル中には回復の道はありません。
出来るだけ早く自覚させる為に、私達はどういう態度をとるか−それにはいくつかの原則があるようですが、私達は、それに、自分で学びとった法則を加えながら、勇気を出してこのアル中という厄介な病気に挑戦してみましょう。
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