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アルコール講座 


【アルコール教室(北摂断酒連合会・北摂断酒連合会家族会)】より
 





 1.アルコール依存症の診断基準
 2.アルコール依存症のチェックリスト(CAGE)
 3.アルコール依存症の発病要因
 4.アルコール依存症関連問題
 5.アルコール依存症の回復とは
 6.アルコール依存症の回復過程
 7.アルコール依存症の回復に必要な条件
 8.アルコール依存症の回復の目安
 9.アルコール依存症関連の自助グループ(断酒会、AAなど)
10.再発の関連要因
11.再発の特徴
12.再発の結果
13.再飲酒を防ぐために
14.回復における再発・再飲酒の位置づけ
15.急性離脱後症状(Post Acute Withdrawal Synome : PAW)とその対応
16.アルコール依存症患者に多い「認知行動パターン」
17.活き活きとした断酒生活を続けるために
18.飲酒欲求が強いとき
19.イライラするとき
20.眠れないとき
21.酒の席に出るとき
22.食事について
23.自助グループとの付きあい
24.酒をやめた喜びを探す
25.アルコール家族のおかれている状況
26.アルコール問題維持連鎖
27.アルコール問題維持連鎖の解消のために必要なこと
28.家族が専門家の援助を受ける目的
29.アルコール問題解決への家族の新しい対処
30.子供が育つ上でのアルコール家庭の問題点
31.アルコール家庭で子供が生き抜くために身につける強固なルール
32.アルコール家庭で子供が適応するための固有な役割
33.アルコール家庭で育つ子供の問題
34.アダルト・チャイルドの問題
35.アダルト・チャイルドの回復
36.アルコール家庭で育つ(った)子供のために親ができること
37.若年者の飲酒
38.アルコールが若年者に与える害
39.今後の若年者のアルコール問題への対応
40.女性のアルコール依存症の分類
41.女性のアルコール問題への今後の対応
42.高齢者のアルコール問題の特徴
43.高齢者のアルコール依存症の分類
44.今後の高齢者のアルコール問題に対する対応
45.コミュニケーションの5段階
46.アルコール依存症になった人と家族の心理状態
47.アルコール家庭で見られるコミュニケーションの特徴
48.アルコール家庭でのコミュニケーションのルール
49.自己表現のタイプ
50.コミュニケーションの方法
51.アルコール家庭でのコミュニケーション(立木茂雄著「幸福の方程式」)
52.アルコール家庭で育った子の体験談「小さな希望」(男性23歳)
53.アルコール家庭で育った子の体験談「生きていてよかった」(女性20歳)
54.アルコール家庭で育った子の体験談「父がいた」(女性高1歳)


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<ザゼンソウ>



「酒」
 
酒害者の家族にとってこれ程
 
恐ろしいものはない
 
辛いものはない
 
苦しいものはない
 
悲しいものはない
 
恥ずかしいものはない
 
大嫌いなものはない
 


 



1.アルコール依存症の診断基準 





アルコール依存症の診断基準は、精神作用物質による障害に含まれています。
 
精神作用物質とは、その物質の摂取によって人間の認識や感情や行動に変化が生じる物質です。
 
その物質のひとつがアルコールで、そのほかに覚醒剤、有機溶剤(シンナー)、マリファナ、モルヒネ、脱法ハーブ、ニコチン、カフェインなどが含まれます。
 
アルコールへの依存は覚醒剤とか有機溶剤とかマリファナへの依存と定義は同じです。
 

次の6つのうち3つが、過去1年間に1ヶ月以上、症状が出ていた場合にアルコール依存症と診断されるのです。
 

(1)飲酒への渇望
 
渇望とは、喉が渇いてからからになったときに1滴の水を求めるあの強い欲求です。
 
強迫的な病的な欲求です。
 
アルコール依存症になる渇望が出て、1杯の酒を得るためには何でもするという激しい欲求です。
 
渇望が出ると飲酒に心がとらわれ、体が欲求する状態です。
 
渇望のために思考は止まり、身体は震え、なにも手に就きません。
 
特に、飲んで酒をやめよう、減らそうと思えば思うほど、渇望が強くなります。
 

(2)コントロールの喪失
 
長い間の飲酒で脳のある部位に故障が出てきて、飲酒量や飲酒時間に関してコントロールを失います。
 
飲めば飲むほど、なお飲みたくなります。
 
飲む時間もコントロールできなくなります。
 
皆さん覚えがおありでしょう。
 
最初の1杯を飲むときはとことん飲酒しようとは考えていないのです。
 
「今日は1杯で切り上げて、早く帰って子供と風呂へ入ろう」と思っているのですが、アルコールが体に入ると気持ちが変わり、いつものようにとことん飲酒してしまうのです。
 
飲むと途中で切り上げられないのが飲酒量へのコントロールの喪失で、適量を守れない、節酒できない状態を意味します。
 

飲む時間に対するコントロールの喪失とは、朝酒、仕事中の飲酒、真夜中の飲酒など、常識的に社会生活に支障が出る時間帯に飲酒する状態です。
 

「アルコール依存症になったから断酒できない」と開き直る人がいますが、アルコール依存症になっても適量の飲酒や節酒ができないだけで、完全断酒はできるのです。
 
飲酒に関するブレーキの故障で、この故障は修理不可能なのです。
 
いくら長く断酒しても、適量守って飲酒できるようになることはありません。
 
それがアルコール依存症には治癒や完治はないとされているところです。
 
断酒ができれば健康な生活はできます。
 

(3)離脱状態
 
飲酒による酔いがさめてくると、眠れなくなる、吐き気がする、頭が痛い、下痢をする、その上コブラがえりがおき、しゃっくりが出る、手がふるえる、幻覚が出る、妄想が出る、ひきつけ発作が起きるなどの症状が現れます。
 
これを離脱症状とも禁断症状とも言います。
 

(4)耐性の増大
 
耐性とは、飲み始めたころの量では十分な酔いが得られなくなり、酔いを求めて飲酒量が増えることや濃度の高いアルコール飲料に替わることを意味します。
 
最初は2,3本のビールで満足していたのに、いつの間にか4,5本でも足りなくなるということです。
 
最初はビールだったのにウイスキーになり、ウオッカに替わるということです。
 

(5)飲酒中心の生活
 
友達も多く、趣味も多かった人が、次第に、友達づきあいが邪魔くさくなり、昔の趣味にも関心がなくなり、楽しみは飲酒だけという状態になることです。
 
家庭でも、子供が近付くとうるさがり、家族にも関心を払わず、会話を持とうとしない状態で、飲酒が最大の関心事で、飲酒が最優先の生活になっているのです。
 

(6)不利益を承知で飲酒する。
 
飲酒でいろいろと問題が生じ、これ以上飲酒すると取り返しがつかないと理解していながら、飲酒して大切なものを失うのです。
 
例えば「これ以上飲酒すると肝硬変になります」
 
「今度飲酒して出勤したら退職してもらいます」
 
「今度酒で問題起こすと離婚です」と宣告されているというのに、
 
最飲酒して肝硬変になり、失業して、離婚になるのです。
 

以上の事柄のうち、3つ当てはまればアルコール依存症と診断されます。
 
皆様いくつ当てはまりましたでしょうか?多くの人は「パーフェクト」のようです。
 




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<うぐいす>
阿武山の坂に登れば ウグイスの 声のどかなり 断酒の喜び  



2.アルコール依存症のチェックリスト(CAGE) 





 米国で用いられているアルコール依存症のチェックリストを紹介します。
 
当てはまる番号に○を付けてください。
 
(1)飲酒量を減らさなければと感じたことはありますか?
 
(2)人から飲酒を非難され、気に障ったことがありますか?
 
(3)自分の飲酒に後ろめたさを感じたことがありますか?
 
(4)神経を落ち着かせるためや2日酔いを治すため迎え酒をしたことがありますか?
 
 以上4問のうち2つ当てはまればアルコール依存症と考える必要があります。
 




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<ゲンゲ>
知らずして選びぬ人は 悲しくも 不治の病にただ浸りけり  



3.アルコール依存症の発病要因 





アルコール依存症の発病はどのような条件が重なった結果でしょうか。
 
(1)アルコールの薬理作用
 
アルコールは薬物です。
 
その薬物としての働きにより、飲酒した人の身体や心に変化が起きます。
 
まず、飲酒による酔った状態が素面の状態よりもよい状態と感じるようになる精神依存です。
 
次に十分に満足できる酔いを求めて飲酒量が増加する、濃度の濃いアルコール飲料になるという耐性です。
 
そして酔いがさめてくると手指が震える、生汗が出る、眠れない、幻覚や妄想が出るという身体依存(離脱症状)が起きます。
 
このような、精神依存、耐性、身体依存が出来上がりますと飲酒欲求が強くなり、飲酒せずにおれないようになり、その上、酔いがさめると不快な症状が出るのでそれを抑えるためにも飲酒せずにおれなくなります。
 

(2)過剰な飲酒
 
過剰な飲酒が発病の条件になります。
 
目安としては男性で成人後の飲酒の場合には、1日平均清酒3合を10年間、男性でも未成年からの飲酒の場合には一日平均3合を3年間、
 
女性で成人してからの飲酒の場合には一日平均3合5年間の飲酒量でアルコール依存が発病する量と考えられています。
 
女性は男性の約半分の年数で発病します。
 
未成年からの飲酒はさらに短期間で発病します。
 
唯、アルコール依存症の発病と治療の開始には時間的に隔たりがあります。
 
治療の開始までに、周囲を困らせながら飲酒が20年、30年続いた場合が多いのです。
 
ちなみに、清酒1号の純アルコールは、缶ビール500ml、焼酎なら2/3合、ワインならグラス2杯、ウイスキーならダブルで1杯、酎ハイなら350mlに相当します。
 

(3)体質との関係
 
飲酒すると真っ赤になるアルコールに弱い体質の人と、青白い顔でいくらでも飲めて2日酔いをしないアルコールに強い体質の人がいます。
 
アルコール依存症になっている人の90%はアルコールに強い体質の人です。
 
わずか10%の人が、飲み始めは飲むと真っ赤になり、無理に飲むと嘔吐し、頭痛がしていたが、次第に耐性が上がって依存症になっています。
 
日本人ではアルコールに強い体質の人が55%で45%が弱い体質です。
 

(4)慢性の進行性の病気
 
30年かけて進行し、平均死亡年齢52,3歳の慢性の病気です。
 
飲酒して10年、30歳前後で一人酒になる、2日酔いで欠勤する、酒癖が悪くなるなどのアルコール問題が始まります。
 
40歳前後で肝障害、膵炎、糖尿病等の内科の病気で入院が始まります。
 
さらに飲酒して50歳前後でアルコール医療につながり、飲酒が続くと53歳前後で短い一生を終わるのです。
 

(5)個人の要因
 
アルコール依存症は誰でもがなる病気で、特定の人格や性格はないと言われています。
 
しかし、医療現場で出会う人たちは、感受性の鋭い、優しい、几帳面な、まじめな性格の方が多いと思います。
 
また、うつ病、発達障害、境界性パーソナリティー障害、強迫障害などの精神疾患により社会生活に困難を抱えている人もいます。
 
いろいろな理由で生活に生きづらさを感じている人達の中には、アルコールの酔いを知り、それに癒され、開放感、陶酔感を味わい、はまっていきアルコール依存症になった人たちがいます。
 
生きづらさが飲酒を必要としたことを自己治療と呼びます。
 
若年のアルコール依存の当事者を理解するのに必要な概念だと考えられます。
 

(6)家族の要因
 
家族が原因でアルコール依存症になったのではありません。
 
しかし、家族関係が全く関係ないとも断言できません。
 
親の病弱、親の依存症、両親の不仲、貧困などの理由で家庭が家庭としての働きを失っている機能不全家庭で育つとき、子供は孤独や欲求不満を抱え、傷ついて育ちます。
 
その人たちが大人になって(アダルトチャイルド)アルコールに出会い、その快感を知り、囚われていく可能性は大きいのです。
 
機能不全家庭に育ったアダルトチャイルドはうつや強迫性障害や依存症になりやすいといわれています。
 

(7)社会の要因
 
アルコールを巡る社会環境が発病に影響を与えます。
 
アルコールの価格や販売方法や宣伝や飲酒文化などが関係すると考えられます。
 

50年前に比べてアルコール飲料の価格は暴落しています。
 
50年前は、アルコールは若者がたやすく手を出せる価格ではありませんでした。
 
しかし、今ではジュースと変わらない価格で購入できます。
 
40数年前に自動販売機でアルコールを販売するようになって以来、子供でも、真夜中の6時間を除くといつでも購入できます。
 
さらに、近年は、コンビニエンスストアーで24時間販売されるようになり、アルコールの購入は「誰でも、いつでも、どこでも」という状況になりました。
 
その上、メディアを通じてアルコール飲料の魅力的なコマーシャルが家庭に届けられ、飲酒を促進しています。
 

日本で、長年続いている晩酌という生活習慣、接待というビジネスの社会における社交習慣、酔いに対する寛容な社会が市民の飲酒量の増加に関連しています。
 
1人あたりのアルコール消費量がアルコール依存症患者の発病率に比例しています。
 




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<ハナミズキ>
楽しみの趣味もつゆとり なかりけり 主人の酒に心はなれず  



4.アルコール依存症関連問題 





アルコール依存症の進行に伴い様々なアルコール関連問題が起きています。
 
(1)健康問題
 
飲酒してきた人たちの身体は肝障害、膵炎、糖尿病,高血圧などでぼろぼろです。
 
アルコールによりうつ病、アルコール幻覚症、嫉妬妄想、脳の萎縮、アルコール認知症などが起きます。
 
健康を害するのは当事者だけではありません。
 
アルコール問題に巻き込まれて家族の15%はうつ病やパニック障害や自律神経失調症などで精神科の治療を受けています。
 
病気になるほどの大きなストレスが家族にかかっているのです。
 

(2)経済・労働問題
 
酒代が必要です。酔って浪費します。
 
その上2日酔いで遅刻したり、欠勤したりで収入が減少します。借金します。
 
高い利息をとられます。
 
返済に行き詰まり債務整理が必要になります。
 
遅刻・欠勤が続くと解雇、失業が起きます。
 
長年の飲酒で反射神経や運動神経に障害が出て労災事故にあいます。
 
生活保護を受けることになります。
 

(3)非行・犯罪
 
現在、刑務所には7万余人が入所しています。
 
そのうち20〜25%、約1.5万人の人たちがアルコール問題を持っていると考えられています。
 
罪状は暴行、傷害、窃盗、恐喝、殺人などですが多くの場合、飲酒中に事故を起こしています。
 
近年、刑務所ではアルコール離脱教育の受講が義務付けられ、自助グループの協力を得て取り組まれています。
 

アルコールに関する犯罪は、飲酒している人たちによるものばかりとは言えません。
 
酔った上の暴言・暴力に脅かされてきた配偶者や子供が、酔っている人を殺傷するという事件が報道されているのは珍しくありません。
 

(4)事故・自殺
 
階段からの転落、自転車と一緒に溝に落ちる、酔って路上に寝ていて車にはねられる、飲酒運転をする、酔って入浴して溺れる、酔って炊事をしていて火事を起こすなどです。
 

WHOは自殺した人の95%は精神疾患を患っており、その80%は未治療であったと報告しています。
 
うつ病が30%で次に多いのがアルコール・薬物依存症で17%を占めます。
 
日本では現在、年間約3万人が自殺しており、その17%は約5千人です。
 

アルコールに関する自殺はアルコール当事者に限りません。
 
米国のアルコール治療施設ヘーゼルデンは10代の家出した子供の56%は、自殺した子供の66%はアルコール家庭の子供であったと調査結果を報告しています。
 
日本では年間10代の子供が約600人自殺しています。
 
単純に66%を当てはめると約400人のアルコール家庭の子供が自殺していることになります。
 
家族の発言やACグループのメンバーの発言は、この自殺に関する数字を架空のものとはいえないのを感じています。
 

(5)家庭問題と子供の問題
 
アルコール依存症は家庭や周囲の人たちを巻き込む病気です。
 
家族は配偶者も、親兄弟も、子供も、長年にわたり家庭のアルコール問題に悩み苦しんでいます。
 
アルコール家庭では両親は不仲で、家庭は怒りの渦の中にあります。
 
安心、安定、安全が欠けた家庭生活は大きなストレスです。
 
不和、別居、離婚が起きます。
 
子供は暴言暴力におびえながらその家庭に適応せざるを得ず、生き抜くためのルールを持ち、成長に偏りが生じることになります。
 




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<バビアナ>
テレビのみ笑う種なき我が家は 既に死におり家庭であらず    



5.アルコール依存症の回復とは





アルコール依存症は身体的、精神的、社会的に病む病気です。
 
回復もまた身体的、精神的、社会的側面において必要とされています。
 
AAではさらに、霊的に病むことが加えられています。
 

アルコール依存症の回復とは何を意味しているのでしょうか。
 
アルコール依存症の回復は単に断酒している年数を意味するものではありません。
 
回復とは「断酒を軸としてバランスの取れた新しい生き方ができるようになること」と考えられています。
 

回復はプロセスで、断酒は回復のスタートで、ゴールはバランスの取れた生き方ができるようになることです。
 
身体的、精神的、社会的なバランスの取れた生き方とは具体的にどのような状態を意味するのでしょうか。
 
例えば、身体的には単に病気になっていないだけではなく、栄養を配慮し、適度に運動して積極的に健康に生きることです。
 
精神的にバランスの取れた生き方とは、物事を正しく判断して、自分の感情や行動をコントロールした生活です。
 
社会的にバランスの取れた生き方とは、物事を合理的に解決し、家族や同僚や友人や近隣と適度な人間関係を持ち、配偶者として、親として、年老いた両親の子供として、社会人として責任のある生き方をすることです。
 

結局、バランスの取れた生き方は人間として成熟した生き方と言えます。
 
米国のゴースキーは、バランスの取れた生き方ができるようになるのには3年から15年の歳月が必要と記しています。
 
飲酒していた当時の行き方を思い出してください。
 
どなたも、とてもバランスの取れた生活をしていたとはいえないことでしょう。
 
このバランスのある成熟した生き方ができるというのは、アルコール依存症に関係なく、人間であれば誰しもそれを目指して生きるのです。
 
アルコール依存症にならなかった人は、バランスの取れた生き方を意識することもなく未熟なまま生涯をすごすこともあります。
 
アルコール依存症という病を持たれたがゆえに、回復として人間の成熟が目指す機会を得たと考えるのはいかがでしょうか。
 
私もそれを目指します。
 




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<ハボタン>
咎めれば咎める我が 惨めなり 隠れ酒見るも口には出さず  



6.アルコール依存症の回復過程 





(1)身体的・精神的回復過程
 
アルコール依存症には回復のプロセスがあります。
 
新阿武山病院の故今道先生は、精神的身体的回復のプロセスを次の5つの段階にまとめました。
 

@離脱期
 
断酒してから2週間までの時期です。
 
手指の震え、生汗、嘔吐、不眠、下痢、高血圧、幻覚、妄想、けいれん発作などの離脱症状が出て、非常に苦痛な時期です。
 

A静穏期
 
離脱期が過ぎた後、不思議なほど飲酒欲求が出ない安定した時期があります。
 
断酒してから3月から半年までの時期で、入院中にその時期を過ごす人もいます。
 

B再飲酒危機期
 
断酒して3月から半年以後1年前後までの時期で、いてもたってもいれないほどの飲酒欲求に苦しむ時期です。
 
この時期は断酒するだけで精一杯で、いろいろと周囲が期待しても応じられないほど余裕のない時期です。
 

C初期安定期
 
断酒が1年続いた時期です。
 
断酒生活にも慣れてきて、心身ともに安定し、少し余裕が出てきます。
 

D安定期
 
断酒2年が過ぎた時期で、いろいろあっても何とか飲酒せず乗り越える力がついてきた時期です。
 

(2)社会的回復過程
 
米国のゴースキーは社会的なプロセスについて次のように記しています。
 

@移行期
 
飲酒を当たり前としていた時期から断酒に意識的に取り組むことにした下敷きです。
 
断酒の必要性に気づき、治療や自助グループにつながり、断酒に努力を始める時期です。
 
回復に必要な基礎知識を得て、自身と飲酒の関連について気づき、「なぜ、飲んではいけないのか」を自覚して取り組む時期です。
 

A安静期
 
断酒して6ヶ月から1年半の時期で、飲酒欲求が減少し、身体が回復し、いろいろな問題を素面で解決できるようになり、断酒への動機を高める時期です。
 

B初期回復期
 
断酒してまる1年過ぎた時期で、自分の生い立ちや性格を考え「なぜ、酒を必要としたのか」「酔うことで、どんな力を得ていたのか」「酔うことで、どんな弱さをごまかしていたのか「酔うことで、どんな問題から逃げていたのか」を問い直し、自助グループで語ることを通じ自己変革に取り組む時期です。
 
気づいたことを胸一つに収めていると打つになりかねません。
 
言葉にして語り、仲間に受け入れられることにより、自分を受け入れ、過去の自分を許せるのです。
 

C中期回復期
 
断酒が2年続いた後の時期で、自分の人間関係、価値観、生き方を問い直し、それがどのように飲酒と結びついていたのか気づき、新たな、断酒した状態でのバランスある人間関係、価値観、生き方を模索する時期です。
 
ゴースキーは「酒をやめているではないか。 AAにも参加しているではない。十分ではないか」 と言って、真の回復に取り組もうとしない人達がいると書いています。
 

D後期回復期
 
断酒が3年以上になった時期です。
 
この時期になって、再飲酒が生じたり、自己破壊的な思いにとらわれたり、うつになる人は、子供時代の家庭生活や親子関係を問い直す必要があります。
 
それは機能不全家庭で育ったことによる<アダルトチャイルドの問題>と考えられるからです。
 
専門職の援助を受けて、ACからの回復を同時に進める必要があります。
 

E維持期
 
断酒が3年以上になった時期で、生活に喜びと感謝を抱き、生き甲斐を持って、「今日一日」の断酒を大切にし、自助グループの仲間や社会に対して奉仕する時期です。
 




 
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<ハマナス>
正月の来るを悲しむ 幼子は まだあどけなき満五才なり    



7.アルコール依存症の回復に必要な条件 





アルコール依存症から回復するにはどのような条件が必要でしょうか。
 
(1)アルコール依存症への治療と援助
 
医学的治療と心理的社会的援助が必要です。
 
医師からアルコール依存症との診断を受け、回復に必要な情報の提供を受けて支援される必要があります。
 
加えて、臨床心理士や精神保健福祉士による心理教育やカウンセリングが回復と社会復帰に役立ちます。
 

(2)自助グループへの参加
 
自助グループである断酒会、AAへの定期的な参加が必要です。
 
世界のAAメンバーのミーティングへの平均回数を調査したところ週1回だったそうです。
 
現在、断酒会の平均例会参加回数はつきに6.8回だそうです。
 
断酒が続けばAAや断酒会の平均参加回数で断酒できるのだと思います。
 
しかし、最初の1年はできるだけ数多く参加することが断酒につながります。
 
週に2〜3回は参加しましょう。
 

(3)当事者の病気への取り組み
 
アルコール依存症は「否認の病気」と呼ばれています。
 
病気の事実を認めようとしません。
 
否認の背後にあるのは病気に関する誤解と偏見と防衛体制だといわれています。
 
当事者が持つ病気に関する誤解と偏見を解消するには、否認する必要のない環境を作ることだと思います。
 
それには、医師は、アルコール依存症は性格や人間性の問題ではなく、回復の方法を伝え、回復を支援します。
 
断酒会やAAでは、断酒して希望を持って明るく生きている姿を見せます。
 
家族は病気だとわかったので回復に協力すると理解と愛情を示します。
 
社会は病気への理解と支援を示すことが必要とされます。
 

(4)家族の理解と協力
 
家族はこれまで病気と知りませんでした。
 
性格や人間性の問題と考え、家族の力でやめさせようと苦闘してきました。
 
病気と理解したところで、これから学習を続けて病気からの回復を支援すると同時に家族自信も立ち直りたいと考え、それを当事者に伝えるならば、何より大きな励みになるでしょう。
 

(5)社会の理解と協力
 
「病気を治して、元気になって働いて欲しい。待っている」と言ってくれる社会だったら、当事者の回復と社会復帰は促進されることでしょう。
 

(6)時間
 
アルコール依存症は10年、20年、30年かけて進行した病気です。
 
回復には順調でも数年の時間が必要とされます。
 
その数年の間に何回かの再発や再飲酒があるかもしれません。
 
再発再飲酒に学び回復の糧にしながら取り組みましょう。
 




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<バラ>
母なりて父にもなりて 柱にも 代わりぬ我は誰にもたれん  



8.アルコール依存症の回復の目安 





 アルコール依存症の回復の目安は、
 
(1)断酒が2、3年継続している、
 
(2)断酒会やAAに定期的に参加して定着し、断友がいる、
 
(3)糖尿病や肝障害などの合併症の治療を継続している、
 
(4)家族関係が修復されている、
 
(5)飲酒中に起こした問題、たとえば、借金、交通事故、親戚とのトラブルなどの解決が進んでいる、
 
(6)就労、自助グループでの奉仕、町内会や老人クラブなどでのボランティア活動などのその人なりの社会参加、などが考えられます。
 




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<パンジー>
テレビにて酒の事件を報じれば 次は我が家と覚悟でふるえり  



9.アルコール依存症関連の自助グループ(断酒会、AAなど) 





アルコール依存症の回復には自助グループである断酒会やAAへの出席が不可欠と言われています。
 
その自助グループについて勉強しましょう。
 

(1)自助グループ(セルフヘルプグループ)とは
 
自助とは自分で自分を助けることです。
 
自助グループとは、自分の問題を認めて、グループの中でその問題の解決に努力することです。
 
自分のアルコール問題を認めて断酒会やAAに参加し、その中でアルコール問題の解決を求めて自ら努力することです。
 

(2)グループの定義
 
ベハンデルトは自助グループを次のように定義しました。
 

@メンバーは共通の問題を持ってグループにかかわっている。
 
断酒会やAAは、飲酒に問題を持って解決を必要としている人の集まりです。
 
アラノンや断酒会家族会は、家庭のアルコール問題で悩み、苦しんでいる人たちの集まりです。
 

Aグループへの専門家の関与は皆無か、あってもわずかです。
 
グループは専門家が関与しないのを原則としています。
 
断酒会もAAも、アラノンも断酒会家族会も運営の主体はメンバーで、メンバーが主人公です。
 
専門家は関与するとしても、それは側面的な、一時的な関与です。
 

B経済的な利潤を追求する団体ではない
 
待遇改善やベースアップのために闘っている労働組合、収益を上げるために取り組んでいる投資家のグループなどは自助グループとは呼びません。
 

C自己変革あるいは社会変革が目的
 
断酒会やAA 、アラノンや断酒会家族会は自分自身を変えることに取り組んでいます。
 
断酒会やAAは断酒による回復に、アラノンや断酒会家族会はアルコール依存症の回復を支援できるようになることと飲酒問題から受けた影響から立ち直ることに取り組みます。
 
その結果アルコール依存症からの回復の可能性や家族の再起を社会が認識することになり、自己変革の取り組みが
 
社会変革につながっています。
 

Dメンバーは対等な立場で協力し、助け合う
 
メンバーは平等で対等です。
 
自助グループに所属している期間の長短や、社会的立場などで左右されることなく平等で対等です。
 
役員が決められているかもしれませんがそれは仲間に奉仕する人で、上下関係はありません。
 

(3)自助グループの特徴
 
自助グループのはたらきは何でしょう
 

@認知の再構成
 
これまで意志の弱い人、だらしのない人とアルコール依存症当事者のことを認知していましたが、自助グループに参加して病気を理解し、病人として悩み苦しんできた人として認知します。
 
認知が変化するのに伴い、感情が変化し、行動の変化に成ります。
 

A適応技術の学習
 
断酒を決意しても、断酒の方法がわかりません。
 
すでに断酒している仲間が、体験から得た知恵を伝えてくれます。
 
家族も断酒した人とどのように付き合えばよいのか戸惑っています。
 
家族の人たちが体験から得た知恵を体験談として語ってくれます。
 

B情緒的サポート
 
これまで孤独でした。
 
飲酒問題を誰にも話せずに来ました。
 
自助グループのなかで正直に話してみたら、笑う人は誰もいず、受け入れてくれ、認めてくれ、わかってくれました。
 
一人ぼっちではなかったと、勇気付けられ、力が湧いてきます。
 

C個人的開示の社会化
 
これまで心を閉ざし、誰にも話さず、秘密を抱えて生きてきました。
 
グループの中で話し、受け入れられ、わかってもらえたことでグループの仲間に馴染んでいきました。
 

(4)AAがしないこと
 
  AAは自助グループがしないことを次のようにメンバーにしています。
 
 @アルコールをやめるように、AAに参加するように説得しない
 
 Aメンバーの記録はとらない、追跡や管理はしない
 
 B診断、投薬などの医療行為はしない
 
 C宗教的サービス、アルコールに関する教育はしない
 
 D就労や家族問題などのカウンセリングはしない
 
 E衣、食、住に関するサービス及びその他の社会福祉サービスはしない
 
 F会費は集めない
 

(5)自助グループ参加の留意点
 
 @続けて5〜6回は参加してから今後のことを判断するようにしましょう
 
 Aとけ込む努力を自らしましょう
 
 B目標とする人やスポンサーを見つけて、お願いしましょう
 
 C所属支部やホームグループを決めて入会し、奉仕しましょう
 
 D自分と飲酒の関係についての体験を、1回に一つ正直に率直に話しましょう
 




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<ヒアシンス>
勤め終え重き心を 引きずりて 家路に着けば酒の夜始まる  



10.再発の関連要因 





「アルコール依存症は再発を特徴とする」といわれています。
 
アルコール依存症は慢性の病気です。
 
急性の病気だったら入院して退院すれば完治し、酒なんか見向きもしないということが起きるかもしれませんが、慢性の病気はそういう訳にはいきません。
 
糖尿病でも高血圧でも、治療を受けていてもすっきり完治することはありません。
 
病気を持ちながら、再発させないで、病気と共生して、健康に生きることが目指されます。
 

アルコール依存症は治癒しない病気だと聞いてがっかりする人がいます。
 
アルコール依存症という病気は、治癒して程ほどに節酒できるようにはならない病気だという意味です。
 
再飲酒しなければ社会生活上に大きな支障はなく、健康な生活は可能です。
 
次の再飲酒が死を招くこともあります。再飲酒を防ぐことは大切です。
 
再発と再飲酒を分けて考えてください。
 
再飲酒の前に、序奏として再発があるのです。
 
その再発で手を打つことができれば、再飲酒を食い止めることは可能です。
 
では再発の関連要因について考えて見ましょう
 

(1)環境的要因
 
@退院、転居、就労などの環境の変化による緊張や動揺
 
入院していた人が退院することによる緊張、転居に伴う緊張と疲労、復職による緊張と疲労などが再発に関係します。
 
変化に弱いのです。
 

A家族関係の歪みから来る不満や葛藤
 
断酒ができても、長年飲酒問題で苦しんできた家族は、断酒を信じて手放しで喜んでくれるわけではありません。
 
断酒の努力をしている人にとってはそのような家族の言葉や態度は怒りになり、なげやりになることもあります。
 

B異性関係やギャンブルによる興奮や情緒の乱れ
 
異性関係やギャンブルもよければよいで、思うようにいかなければいかないで興奮し、動揺します。
 
それが再発の引き金になるのです。
 
AAでは恋愛、別居、離婚、復縁は断酒が1年以上続いた後にしましょうと提案しています。
 

C災害や事故に遭遇した結果の動揺
 
断酒期間の短い人はハプニングに弱いのが特徴です。
 
思いがけないことはいつ起きるか知れません。
 
何事かが起きると誰かに電話して相談することで解決はできなくても余裕が取り戻せます。
 
常に相談できる人を2、3人は持っておきましょう。
 

(2)身体的要因
 
@早期の就労や残業による過労
 
断酒後も疲れやすく、疲れが取れにくい傾向があります、早期の就労、復職後の残業や休日出勤などで疲れが蓄積し、それが再発につながる場合があります。
 

A風邪、歯痛、腹痛などの身体的不調
 
断酒後最初の1年は心身がアンバランスな状態です。
 
風邪も引きやすく、ひいたらなかなか治りません。
 
断酒したら虫歯が次々と痛み夜も眠れないなどということもあります。
 
神経痛、腰痛、うつなど次々と不調が出ます。
 

(3)精神的要因
 
@断酒後3〜6ヶ月で、酒害の自覚が薄れ、否認が強くなる。
 
断酒して3〜6ヶ月たつと、「酒はやめた。通院も、自助グループも必要ない」という人がいます。
 
断酒に自信を持ちすぎて、聞く耳を持たないのです。
 

Aうつ状態やうつ病になり、飲酒でその状態を解消したいと考える
 
断酒後3分の1の人たちがうつ病や抑うつ状態になります。
 
鬱々としたうっとうしい気分を解消するのに飲酒が手っ取り早いと考えるのです。
 

B睡眠剤や安定剤の依存になる
 
断酒後、不眠やうつ状態で受診し、投薬を受けて、処方薬依存になり、薬でもうろうとした状態で飲酒してしまう人がいます。
 
睡眠薬、安定剤、抗うつ剤などはアルコールの主治医に相談してから服用するようにしましょう。
 




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<ビオラ>
こんなにも痩せて細き ウエストに 九号のスカートゆるゆる回る    



11.再発の特徴 





再発が起きますと気持ちと行動に変化が生じます。
 
(1)気持ちの変化
 
@「飲まないためには何でもする」という決心が薄れ、マンネリ化する
 
断酒を始めたときに「飲まないためには何でもするぞ」と決心していました。
 
日がたつにつれてその決心が薄れ、自分がマンネリ化しているのは問わず、自助グループがマンネリ化しているなどと批判します。
 

A「自分は他の人と違う」と巧妙な否認を始めます
 
断酒を始めた頃、自助グループの仲間の話に共感し、同じだと感じていた人が仲間との違い探しに熱心になり、「他の人とは違う」と思い、飲酒を容認するようになる。
 

B「飲みたい気持ちはないが、飲まない気持ちもない」
 
「飲みたくてたまらない」という飲酒欲求はないが、「何があっても飲まない」という気持ちもないのです。
 
気持ちが断酒に関して緩んでいるのです。
 

C抑うつ状態になる
 
断酒しているが、落ち込み、無気力になり、言葉も少なく、声も低く、消極的になるなどの抑うつ状態に陥り、この鬱々とした気分を晴らしたいと思うのです。
 

D不平、不満が増えて、物事に批判的になる
 
断酒してから、「感謝、感謝」と言葉にし、前向きに取り組んでいたのに、通院や自助グループや仲間に対して批判的になり不平、不満が多くなります。
 
また、理由もないのに怒りっぽいことなどもみられます。
 

(2)行動の変化
 
@通院や自助グループの活動に消極的になる
 
断酒と同時に熱心に通院していたのに足が遠のき、自助グループへの参加も消極的になり、自分でいろいろ理由をつけて休もうとします。
 

A小さな嘘やごまかしが増える
 
断酒とともに正直で几帳面になっていたのに、小さな嘘やごまかしがみられるようになります。
 

B居酒屋・スナックなどの酒席、パチンコ・競馬などのギャンブルに近付く
 
居酒屋に行き、スナックにカラオケを歌いに行き、ウーロン茶で楽しんだと言っています。
 
しかし、度重なると再飲酒になります。
 
君子危うきに近寄らずです。
 

C睡眠薬、痛み止めなどの依存性薬物を服用する
 
不眠、頭痛、うつ、イライラなどで睡眠薬や痛み止め、安定剤を服用し、ぼうっとした状態で時間を過ごし、理性のレベルの下がった状態での再飲酒が起きます。
 




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<ヒマラヤユキノシタ>
「もう止めた」流しに捨てし ビンの酒 いつものパターンに心躍らず  



12.再発の結果 





再発を防げずに、再飲酒になってしまうとどうなるでしょう。
 
(1)アルコール依存症当事者が再飲酒に打撃を受けて、自信やプライドを失う
 
自分が再飲酒したことにショックを受けます。
 
何ヶ月か、何年か断酒していたことによる自信とプライドを失います。
 
そして自暴自棄になり連続飲酒になる場合もあります。
 

(2)主治医、断友、家族を裏切ったと自責の念に苦しみ、劣等感と自責感を強める
 
再飲酒によって主治医や家族や断友を裏切ったという気持ちで、自分を責めずにおられなくなり、罪悪感を持ち、苦しみます。
 
通院、自助グループから離れます。
 

(3)周囲の人、多くは家族が再飲酒に失望し、怒り、その後の協力を拒否する
 
これまで断酒に協力してくれていた家族が、当事者が再飲酒したことで失望し、怒り、断酒への協力を拒否することになります。
 

(4)再発も再飲酒も回復へのチャンスと捉え、そこから学び、断酒に積極的になる
 
再飲酒した後で、気を取り直して、もう一度「なぜ再飲酒したんだろう」「どうやれば再飲酒を防げたのだろうか」と考えて、断酒に再挑戦する人たちです。
 
再飲酒から学び、回復を進める糧にして、前進します。
 




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<ヒマラヤユキノシタ>
なぐられる母を庇いて 前に立ち 父に向かいぬ娘は小五  



13.最飲酒を防ぐために 





では、再飲酒を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか。
 
(1)再飲酒の可能性が常にあることを自覚し、再発に気づく
 
アルコール依存症は再飲酒の危険が常にあることを自覚しておきましょう。
 
誰にでも、いつでも、何処ででも再飲酒は起こりうると考え、用心を怠りなくし、再発に気づくことが大切です。
 
そのためには認知行動療法が役に立ちます。
 

(2)通院治療、自助グループ参加を生活のリズムに組み込む
 
合併する慢性疾患がなくても断酒1年までは通院を継続しましょう。
 
断酒して春夏秋冬が過ぎてやっと身体も心も断酒状態になれるのです。
 
その間にいろいろのことが起きます。
 
主治医やスタッフに相談しながら乗越えましょう。
 

(3)断友を作り交友を深める
 
飲酒している間孤独でした。
 
当事者は人間関係が苦手な人が多いです。
 
自助グループの中で断友を作りましょう。
 
そのためには断酒会やAAで自分と飲酒に関するエピソードを体験談として話しましょう。
 
共通の体験を持つもの同士の親密感が生まれます。
 

(4)専門職に相談しましょう
 
断酒会やAAの先輩に相談するのはよいことです子供の問題や自助グループに関する問題は専門職に相談するのが適当かもしれません。
 
困ったことがあれば気軽に相談できる専門家を見つけておきましょう。
 

(5)一日断酒の喜びを大切にする
 
「断酒したけれど、貯金も増えないし、家も建たないし、嫁さんも見つからん」などという人もいますが、そんなに大きなことではなく、日々の生活の中に小さな喜びを見つけだす努力をしましょう。
 
それがバランスの取れた生き方につながるものだと思います。
 
その積み重ねが断酒のエネルギーになります。
 




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<ヒメキンギョソウ>
夏の日に長袖通しぬ 両腕に 昨夜殴らるアザの残れり  



14. 回復における再発・再飲酒の位置づけ 





アルコール依存症の回復のプロセスの中で、巧妙な再飲酒の誘惑に負けて、心ならずも再飲酒に陥ることはあります。
 
大事なことは、その後です。
 
再飲酒した事実を家族や断酒会の仲間や主治医に、正直に話して相談しましょう。
 
飲んだ後それを隠していると、必ず遠からずまた飲みます。
 
正直に話すことで、気持ちの切り替えができます。
 
そして再出発です。
 
「飲んだときこそクリニック!」と主治医は言っています。
 
再飲酒に関連した状態や感情や行動を問い直し、そこから問題点を見つけ出し、それを回復の糧として前進することがもっとも大切です。
 
飲んだことはショックだけれど、気を取り直して再挑戦することです。
 
再飲酒したことで、人生を終わりにできるわけではありません。
 
断酒による回復を目指して取り組み、新しい生き方を見つけましょう。
 




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<ヒメキンセンカ>
夢にまで飲みて我を 悲します 目覚めば頬に涙つめたし  



15.急性離脱後症状(Post Acute Withdrawal Synome : PAW)とその対応 





 近年、急性離脱後症状(PAW:パウ)と呼ぶ、約2週間の離脱期が過ぎた後に、短くて半年、長くて2年くらい続く後遺症状が注目されています。
 
 このパウが再発・再飲酒に大きく関連しているということです。
 
 新しい概念について学んでおきましょう。
 

(1)急性離脱後症状(PAW:パウ)の要因と影響
 
@身体的側面
 
 断酒した人の75〜90%はパウを経験しています。
 
 飲酒によって身体や、神経や脳が大きな損傷を受けています。
 
 その上に長い間栄養不足でした。
 
 長ければ2年くらい、脳が十分働かない状態になるということです。
 

A心理的側面
 
 長い間飲酒だけがストレス解消の方法でした。
 
 断酒することでストレス解消の方法を失い、他にストレス解消の方法がなくストレスがたまります。
 
 その結果、簡単な問題にも対応できないのです。
 

B社会的側面
 
 断酒によって生活スタイルがすっかり変わりました。
 
 それが新たなストレスです。
 
 夜の時間、断酒して家族とどう向き合えばよいのかわからないのです。
 

(2)具体的な急性離脱後症状(PAW:パウ)
 
@思考プロセス障害
 
 考えがまとならない、集中力が続かない、かたくなで、そして回りくどくなります。
 

A情動障害
 
 さっき聞いたことをすぐ忘れるという短期記憶の障害が見られます。
 
 ストレスになる昔の出来事を思い出せません。
 

C睡眠障害
 
 怖い夢、奇妙な夢を繰り返し見ます、眠りが浅く、途切れて、睡眠時間が短いです。
 

D身体的協働性の問題
 
 疲れやすくてバランスが悪い状態です。
 

Eストレス感受性
 
 ストレスに過剰に反応したり、過少に反応してアンバランスな状態です。
 

(3)急性離脱後症状(PAW:パウ)への対応
 
@病気に関する教育
 
 まず、パウという長期に続く後遺症があるということを、当事者が知ることが大切です。
 
 どうも昔に比べて頭の働きが悪いと思う時にも、2年くらい経ったら、元に戻る可能性があると考えて、希望を持って自分の状態を判断することができます。
 

A急性離脱後症状(PAW:パウ)の沈静化
 
 パウについては自分から話した方が良いようです。
 
 自分ひとりで抱え込んで悩む必要はありません。
 

B身体的健康への支援
 
 パウには栄養不足も大いに関係していますので、栄養を取ること、適度に運動することを大事にしましょう。
 
 特に牛乳、チーズ、豚肉、豆腐、納豆、小魚、野菜、などのカルシウムとビタミンBをたくさん取りましょう。
 

C霊的回復
 
 パウを意識して、自助グループの中で断友と良い関係を持ち、奉仕して行きましょう。
 

以上のようなパウの影響もあり、最初の2年は再発しやすく断酒に苦労が伴うのです。
 




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<ヒメジョオン>
憂きし日は心あざむき 尚さらに 濃い目に紅を引きて出勤す  



16.アルコール依存症患者に多い「認知行動パターン」 





 今、認知行動療法が、アルコールや薬物依存の人の回復に効果がると言われています。
 
 アルコール依存症の患者には、特徴的な認知行動パターンがあります。
 

(1)マイナス思考
 
 物事や人のマイナス面だけに注目することが多い
 

(2)極端化思考
 
 極端に考えます。
 
 0か100かで50がありません。
 
 白か黒かで灰がありません。
 

(3)全体化思考
 
 部分的な問題を全体の問題と決めつけてしまいます。
 

(4)すべき思考
 
 こうすべき、ああすべきと考え、自分や他人を縛ります。
 

(5)フィルター思考
 
 物事や人をふるいにかけ、マイナス面だけを残して見ます。
 

(6)自己中心的思考
 
 物事や人を自分中心で考えて、相手の立場を無視します
 

(7)ラベル貼り思考
 
 あの人は「嫌い」、あの人は「駄目」「最悪」などというラベルを貼って、それですべてを片づけようとする考えです。
 
 



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<ヒメツルソバ>
暴れ狂う昨夜の悲しみ 抱きつも 仕事に入れば顔には出さず  



17.活き活きとした断酒生活を続けるために 





慢性の病気は完全に治ることはありませんから、病気と上手に付き合いながら、より良い生活をしていくことが目指されます。
 
例えば、高血圧も慢性の病気です。
 
医師は投薬をする前に、塩分を控えめに、肥満を治して、くよくよ考えないなどという日常生活の指導を行います。
 
糖尿病の場合も同様です。
 
食事療法、運動療法に取り組み、それでも改善が不十分なときに投薬します。
 
アルコール依存症でも、他の慢性疾患と同様に断酒を続けるために日常生活に工夫をして見ましょう。
 

(1)「なぜ、断酒していないといけないのか」を問い直す
 
まず、「なぜ、断酒しないといけないのか」を問い直してみましょう。
 
それには治療や自助グループにつながる前後2、3ヶ月の生活を思い出してください。
 
そこに断酒する必要性を見つけ出せることでしょう。
 
それを自覚していることが大切です。
 

(2)1ヶ月なり3ヶ月なり実現可能な断酒期間を目標にしよう
 
1ヶ月、3ヶ月という、とりあえず達成できそうな断酒期間を目標に決めましょう。
 
生涯断酒や一生断酒という言葉は聞く側にとっては格好良いのですが、言えば言うほど、飲みたくなるものだと聞いたことがあります。
 
とりあえず今年の夏まで、正月までなど達成可能な手近な目標を決めて、その達成に取り組みましょう。
 

(3)最初の1杯に手を出さない
 
毎日1升の酒を飲んできたとしても、断酒するときには最初の1杯を飲まずに過ごすことから始まり、それに尽きるのです。
 
最初の1杯なしに2杯、3杯はないのです。
 
最初の1杯に手を出さないで辛抱することがスタートです。
 

(4)1日断酒、24時間断酒の実行
 
断酒というのは一日単位で考えましょう。
 
明日飲むことがあったとしても今日一日だけは断酒する。
 
「一日断酒」です。その積み重ねが3日断酒、1ヶ月断酒です。
 

(5)定期的な治療を受ける
 
断酒して最初の1年は通院しましょう。
 
断酒後に心身いろいろな変化が出ます。
 
それに医学的な治療や心理社会的な支援を受けましょう。
 

(6)定期的に自助グループ(断酒会やAA)に参加する
 
定期的に自助グループに参加しましょう。
 
断酒を始めて最初の1年は週2、3回は参加するのが断酒の継続につながります。
 
「断酒会に行っても、おもろうない。AAも、もうひとつや」と言われる人がいます。
 
断酒会やAAは、趣味の会でも遊びの会でもありません。
 
あなたの命と人生がかかっている会です。
 
面白くて、楽しくて通うところではありませんが、通い続けていると何処よりも楽しい会になるようです。
 

(7)普通の生活を規則正しくする(起床、就寝、入浴、食事など)
 
断酒には常識的な生活が大切です。
 
朝は6時、7時には起き、夜は10時、11時には寝て、3度3度食事をとり、2、3日おきには入浴するという規則正しい生活に週1回の通院、週3回の例会出席などの、断酒に関するメリハリをつけましょう。
 




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<ヒメツルソバ>
「這ってでも出勤せよ」と 呼びに来し 上司にそむく御用始めの朝    



18.飲酒欲求が強いとき 





断酒に飲酒欲求はつきものです。
 
どのように対処すればよいのでしょうか。
 

(1)断酒に飲酒欲求はつきものと覚悟しましょう
 
断酒している人は誰でもこの飲酒欲求と闘い、現在の断酒を手に入れているのです。
 
先輩達の通った道なのです。
 
飲酒欲求は一過性のものです。
 
断酒が続くと飲酒欲求は次第に減少していくようです。
 

(2)自助グループに参加する。断酒仲間と電話や訪問で交流する
 
飲酒欲求が激しいとき、一番役に立つのは断酒会やAAに行くことです。
 
そこには飲みたい気持ちを持ちながら、飲まずに乗越えた人達が集まっています。
 
あなたがどんなに今日飲みたかったかを話せば、理解してもらえます。
 
飲みたくてたまらない日ほど、断酒会やAAに通いましょう。
 
そのために情報を集めておきましょう。
 

(3)家族なり、周囲の人なりに話しましょう
 
飲みたい気持ちをじっと抱えているとエスカレートします。
 
言葉にして話すことが役に立ちます。
 
あなたが断酒していることを知っている家族なり、友人なりに話して聞いてもらいましょう。
 

(4)甘い飲み物や食べ物をとる
 
飲酒欲求が激しいとき、甘い飲み物や、食べ物が役に立ちます。
 
ココア、コーラ、カステラ、バナナなどです。
 
とにかく、何かを飲んで食べると気持ちが落ち着くようです。
 

(5)独りぼっちにならないこと
 
独りぼっちでいると気分転換ができないので飲酒欲求が続くようです。
 
そんなときには自助グループに行って断友に会う、電話で話すなどしましょう。
 




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<ビヨウヤナギ>
気に病みし事済まずして 五月雨 降りて憂うつな午後  



19.イライラするとき 





断酒にイライラはつきものです。
 
現在断酒している人も、それを乗越えたのです。
 
特に断酒後3ヶ月、6ヶ月まではイライラします。
 
前回学習したパウの影響でしょう。
 
脳が断酒後、まだ十分に働かなくて、イライラした気分を引き起こすのだと思います。
 

(1)イライラは一過性のもの
 
このイライラも一過性のもので、激しいイライラは15分から30分で落ち着きます。
 
ほんのしばらく、嵐が通り過ぎるまでの辛抱だと思いましょう。
 

(2)甘いものや食べ物をとる
 
イライラするときにも、コーラ、ココア、コーヒー、バナナ、カステラなどの甘い食べ物や飲み物を口にすることで落ち着きを取り戻すことができます。
 

(3)散歩、サイクリング、ジョギング、掃除などで身体を動かす
 
イライラするときに身体を動かすことは気分転換になります。
 
自転車で走る、ジョギング、ウォーキング、洗濯、掃除なども役に立ちそうです。
 

(4)シャワーを浴びる
 
イライラするときにシャワーを浴びましょう。
 
浴びながら腹が立つ人の悪口を言いましょう。
 
シャワーが終わると身体も心もすっきり爽やかになっています。
 

(5)イライラが3日も続くようなら診察を受ける
 
イライラが3日も続くようでしたら、主治医の診察を受けましょう。
 
うつ病で焦燥感が強くなっている人もイライラが続きますので。
 




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<フクジュソウ>
いつ何時酔って帰りぬ 君の為 錠をはずして「お帰り」と待つ  



20.眠れないとき 





前回学習したパウにもあったように、断酒後、怖い夢、奇妙な夢、眠れないことは共通しています。
 
断酒が6ヶ月、1年続く中で次第に解消されます。
 
大阪のアルコール専門医師は不眠には最初の2週間は睡眠薬を処方してくださいますが、その後は辛くても自然の睡眠のリズムを取り戻すのを待つことにされています。
 

(1)1時間以内の昼寝
 
睡眠時間が6時間以内のときには、事情が許せば、1時間以内の昼寝をすることがとても効果的です。
 
それ以上長い昼寝は夜の睡眠にマイナスの影響を与えます。
 

(2)昼に適度な運動をする
 
不眠の人には、昼間、ジョギングやウォーキングなどの適度な運動が役立ちます。
 

(3)入浴する、満腹も空腹も避ける、脳を休める
 
風呂はぬるい目でさっと入ることが睡眠にプラスになるようです。
 
満腹も空腹も睡眠にはマイナスです。
 
脳は睡眠に入るのに1時間ぐらいの静かな状況が必要です。
 
眠る時間の1時間前にはテレビを消しましょう。
 

(4)主治医に相談する
 
睡眠は3日ぐらいの平均で6時間以上を確保したいものです。
 
3日以上眠れない日が続くときにはアルコールの主治医に相談しましょう。
 




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<フジ>
今頃はどこで何をしてるやら 編み物止めて時計見上げる  



21.酒の席に出るとき 





AAでは断酒後1年間は、酒の席に出ないようにしましょうと言っています。
 
しかし、お通夜やお葬式になど出ないわけにはいかないときもあります。
 
その時のために。
 

(1)酒席に出るが、飲酒しない決心を固めましょう
 
飲酒についてあいまいな気持ちで酒席に出ると必ず飲酒してしまいます。
 
飲まない決心ができないときには酒席には出ないでおきましょう。
 

(2)酒席に出るが、飲酒しないと自助グループで宣言する。
 
あらかじめ酒席に出ることが判っているときは、自助グループで宣言しましょう。
 
「会社の忘年会ですが、飲酒しないで切り抜けます」と宣言してから出席しましょう。
 
急に酒席に出ることになったときには断酒会やAAの断友に電話で宣言しましょう。
 

(3)飲酒を断る理由を決めておき、はじめにきっぱり断る
 
あらかじめ断る理由を決めて出席し、「ドクターストップで、酒をやめました」とか「今日は車で来ましたから」などと最初にきっぱり断りましょう。
 

(4)アルコール以外の飲み物を自分で用意する
 
ジュースかウーロン茶を自分で用意して出席しましょう。
 
全く飲酒する気がないことを示すことになります。
 

(5)酒席ではさっさと食べて長居はしない
 
酒の席は長居しないでさっさと食べて、切り上げましょう。
 
長居していると悪酔いした人が無理強いしてきたり、絡んでくる可能性があります。
 

(6)自信がない時には抗酒剤を考えましょう
 
主治医に酒席のことを話し、抗酒剤について相談しましょう。
 

(7)家に帰りつくまで油断しない
 
酒席では毅然と断って切り抜けたのですが、酒席で動揺していたこともあり、飲めなかった悔しさもあり、家の近所まで返って飲酒した人もあります。
 
油断なく。
 




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<フヨウ>
しんしんと更け行く夜に 聞こえ来る 胸高鳴りぬ救急車の音    



22.食事について 





(1)空腹、のどの渇きは避ける
 
断酒にはのどを乾かさない、お腹を空かさないことが一番手軽な対策です。
 
これまで間食をしなかった人が断酒後、口寂しさもあって間食の習慣ができます。
 
おにぎりとか菓子パンとかを用意し、冷蔵庫には、麦茶とか牛乳とかをたっぷり用意しましょう。
 

糖尿病のある方は、断酒後の間食に悩みます。
 
野菜スープや野菜サラダ、豆腐、こんにゃくゼリー、味昆布などの低カロリーで満腹感のあるものを用意しましょう。
 

(2)スープや吸い物を用意し、酒の肴を避ける
 
断酒後食事にお味噌汁やスープがあるとご飯が食べやすいようです。
 
また、これまで酒の肴にしてきた料理は当分出さないようにしましょう。
 
飲酒欲求につながるようです。
 
梅酒や果実酒、粕汁、奈良漬、ブランデーケーキなども家に置かないことにしましょう。
 

(3)バランスのよい食事に配慮しましょう
 
飲酒している間は栄養失調でした。
 
バランスのよい食事を用意し、特にカルシウムとビタミンBを食事から取りましょう。
 
牛乳、乳製品、豆腐、納豆、豚肉、小魚などがよいようです。
 




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<ホウセンカ>
また一つ近所の灯り 消されゆく 帰らぬ君に今夜も寝れず    



23.自助グループとの付きあい 





自助グループはアルコール依存症の回復には非常に重要です。
 
しかし、人間関係で悩む人も多くいます。
 
お互いに相手を尊重しながら忍耐と寛容が必要なのだと思います。
 

(1)開始の15分前には到着して挨拶し、準備する、終了後は片づけを手伝う
 
遅くても15分前には会場に着き、挨拶をして準備を手伝いましょう。
 
終了すると後片付けを手伝い、挨拶して帰るなどグループになじむ努力が必要です。
 

(2)休むとき支部長や断友に連絡を入れる
 
例会やミーティングを休むときは支部長や断友に電話しましょう。
 
黙って休むと次回何となし参加しにくいと思ったりします。
 

(3)体験談は自分自身と飲酒および断酒の関連についてのみ正直に率直に語る
 
体験談は自分自身と飲酒についてのみ話しましょう。
 
仕事のことや趣味のことを話していたのでは断酒にもその後のバランスある生き方にも結びつきません。
 
断酒会やAAに溶け込むのに一番役立つのは体験談を語ることです。
 

(4)例会やミーティング以外の忘年会、ハイキングなどの交流会も大切に
 
例会やミーティングは「言いっぱなし」「聞きっぱなし」で運営されますので、そこだけでは個人的につながりができません。
 
断酒後、自助グループの仲間との絆が大きな支えです。
 
イベントにも参加して個人的なつながりを深め、絆を育てましょう。
 

(5)目標となる断友やスポンサーを持ち、個人的に相談に乗ってもらう
 
できるだけ早く目標にする人を探し、スポンサーをお願いしたり、相談に乗って欲しいと頼みましょう。
 




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<ホオズキ>
いくたびも時計見上げて案じ待つ 雪降る夜更けはいと心細き    



24.酒をやめた喜びを探す 





活き活きとした断酒をするたには、酒をやめた喜びを探す必要があります。
 
酒をやめた喜びはひとりでに湧いてくるものでもないようです。
 
自分で小さな喜びを意識的に探す必要があります。
 
喜びのないことは長続きしないものです。
 

これまで、断酒した当事者が語ってくださった断酒の喜びを紹介します。
 

(1)朝吐き気がなく、気持ちがよい
 
飲酒していた頃はいつも2日酔いで朝から吐き気があり、歯を磨こうとする空えづきが出ていた。
 
それがなくなった。
 

(2)特別ご馳走があるわけではないがご飯が美味しい
 
3度3度のご飯が美味しい。
 
米の飯って、こんなに美味しかったのかと思う。
 

(3)嘘をつかなくてすむので明るくなった
 
飲酒している間、嘘に嘘を重ねていた。
 
断酒して心が軽く明るくなれた。
 

(4)家庭が明るくなった
 
妻や子供が声を上げて笑っている。
 

(5)子供がなつく
 
飲酒していた当時、子供もペットもそばには来なかった。
 
今なついてくれる。
 

(6)子供の貯金箱を狙わずにすんだ
 
断酒して一週間、子供の貯金箱を狙わずにすんだ。
 

あの当時は、「酔いの陶酔感、開放感、あの高揚感、あれに代わるほど良い物があるとは思えない。
 
しかし、断酒した先輩達は酒をやめてよかった。
 
特別に良いことがあるわけではないが、飲酒していたころよりはよい、と言われるので、この言葉を信じて、今はやめてみます」と言われました。
 

どうぞ、酒をやめた喜びを意識して探し、その喜びに支えられて断酒を進めてください。
 




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<ボケ>
ふっくらと肥えて笑顔の親友に 我にはつかめぬ幸せ羨む  



25.アルコール家族のおかれている状況   





(1)知識の不足による誤解と偏見
 
家族はアルコール依存症という病気に関する知識がありません。
 
酒を飲んでは問題を起こすので困り果て、どうしてこんな飲み方をするのか、どうして同じ失敗ばかり繰り返すのかと思い「意志が弱いのだ。責任感が乏しいのだ。家族に対する思いやりがないのだ」と、その人の性格や人間性の問題と思ってきました。
 
そう思えば、なぜもっとしっかりしないのかと腹が立ってきますし、恨めしくもなります。
 

アルコール依存症という病気はある日突然なる病気ではありません。
 
普通の酒飲みだったのに、だんだんとひどくなり、そしてどうにもならなくなります。
 
普通の酒のみと病気の飲み方との境目ははっきりしないので、家族は病気だと認識しにくいのです。
 

(2)アルコール問題による日常的なストレス
 
家族は問題のある酒の飲み方しかできない人と暮らしていると、心の休まる時がありません。
 
今夜はちゃんと帰ってくるのか、おとなしく寝るのか、ひと暴れするのか、明日、仕事に行くのか、今月の給料はちゃんと入れてくれるのか、どこかで借金しているのではないかと次々と心配が尽きないのです。
 
家族は日夜悩んで、ストレスが高くなります。
 
アルコール家族の15%は、うつ病、パニック障害、自律神経失調症などで精神科の治療を受ける必要がある状態だといわれています。
 

(3)社会からの役割期待と家族の責任感
 
このように飲酒問題で困りながらも、解決の方法が見つからずにいる家族に対して、社会は「妻や親は何をしとるのや」「家族は他人に迷惑かけないように、社会に迷惑かけないように、何とかすべきや」と、飲酒している人よりも家族に怒りを向けます。
 
50歳も過ぎた人が欠勤を繰り返すからといって会社は妻を呼び出し説教します。
 
警察も、道端で寝ていたところを保護し、当然のごとく家族に「迎えにこい」と連絡します。
 

社会は酒を飲んで問題を起こす人の責任を家族がとって当然としています。
 
家族は酒を飲んでは問題を起こす人のそばで、後始末して、代わって問題を解決するのです。
 

(4)親族や地域社会からの孤立
 
家族は飲酒問題が繰り返される生活を恥ずかしく思い、親戚つき合いも隣近所のつき合いも避け、孤立していきます。
 
買い物に行くのも、隣近所に誰もいないのを見計らって出かけます。
 
親戚からも、お祭りや正月に「子どもを連れておいで。
 
でも、あの大酒飲みだけは連れてくるなよ」などといわれると、子どもが行きたがっても連れて行けなくなります。
 
わが家ほど不幸な、私ほどみじめな人はいないと思い、同窓会も、職場の食事会も断って、どんどん孤立していきます。
 

(5)社会的支援の不足
 
このような状態で悩み苦しんでいる家族を支援するところが少ないのです。
 
保健所に行けば、専門家がいて相談に乗ってくれるのですが、それが周知されていません。
 
どこへ行けばどんな支援がうけられるのかわからず、家族は何年にもわたり苦しみます。
 




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<ボタン>
クラブ終え疲れて帰る 息子(こ)の耳に くだ巻く父の荒声かなし    



26.アルコール問題維持連鎖  





親戚の人や職場の上司に酒をやめるように説教してもらいましたが酒をやめませんでした。
 
結局、家族は自分の力で、問題を解決するしかないと考え、泣いて頼んでみたり、離婚すると脅してみたり、あの手この事で何とかやめさせようとしてきました。
 
でも、飲む人は相変わらず飲み、暴れる人は、相変わらず暴れました。
 
このようなアルコール家族を対象に、1970年代、米国やヨーロッパで研究が行われました。
 
アルコール問題が解決しなかったのは、家族の努力の不足ではなく、アルコール問題解決のための家族の常識的な判断と対処が、飲酒を持続させる悪循環になっていることが明らかになりました。
 
家族が判断と対処を逆転させないかぎりアルコール問題の解決はないということです。
 
この悪循環をアルコール問題維持連鎖と呼びました。
 

では、家族はどのような常識的な判断をしていたのでしょうか。
 
家族は、家族の力で飲酒をコントロールしてやめさせるしかないと判断していました。
 
そして、その判断に基づいて、過干渉になり、世話を焼き、コントロールし、監視しました。
 
それでも飲酒して問題を起こすと、他人や社会に迷惑かけられないと思って、問題を後始末し、代わって解決して、責任をとりました。
 
借金も支払い、ご近所にも詫びを入れ、飲み屋のつけも払いました。
 
暴れて壊したガラスは片付け、失禁して汚した布団も片付けました。
 
その上で、家族は不満、怒りを当事者にぶつけて、叱り、責め、非難しました。
 
その結果、本人は家族に腹を立て、「子ども扱いしやがって」「うるさいこと言いやがって。飲まずにおれない」「誰も理解してくれない、家に居場所がない」と言いながら飲酒するのです。
 

この判断と対応を逆転させる必要があるのです。
 

まず、家族にはコントロールして、酒をやめさせる力はないことを認めることです。
 
漫画家の西原理恵子さんが講演でアルコール依存症のご主人のことを話されました。
 
「家族には、当事者の酒をやめさせる力はありません」と言われました。
 
「あっ、私と同じ意見だ」と喜びました。
 
そして続いて「アルコール依存症は、医者にまかせましょう。医者が治してくれます」と言われたので、「あっ、ここが違うところや」と思いました。
 

家族も、医師も、自助グループの仲間もアルコール依存症当事者の飲酒をコントロールすることはできないのです。
 
昔から言われているように病気は医師が治すのではなく、患者一人ひとりが持っている病気から回復する自然治癒力を医師がサポートして強めることで回復が進むのです。
 
アルコール依存症も同じです。
 
飲酒する人自身が潜在的にもっている自然治癒力、これを復元力とも言います、が大きく強くなって断酒が実現するのです。
 
当事者は「死ぬほど飲みたくて、死ぬほどやめたい」と思っています。
 
この回復や立ち直りへの動機を強めることが断酒を実現することになります。
 

酒をやめ、回復するのは当事者が主人公です。
 
当事者の自然治癒力、復元力を強め、高めていくように対処することが必要なのです。
 
干渉し、世話を焼き、コントロールし、家族の思い通りにしようとするのではなく、当事者を一人の人間として信頼し、尊重し、個人責任を重視して対処することです。
 

これまでは当事者の性格や人間性の問題だと思っていましたので、飲む人に腹を立てていました。
 
飲酒する人を嫌い、軽蔑していました。
 
病気で飲酒をやめたいと思いながらも止められずにいる人と理解して関わる必要があります。
 
当事者が何を考え、何を感じ、都合はどうかと質問することから、信頼と尊敬を持つ関わりは始まると思います。
 
また、当事者は責任をとるのは無理だと決め込んで、家族が代わって後始末し、解決してきました。
 
病気だとはいえ大人として言葉や行動に責任をとるのは当然のことです。
 
信頼と尊敬と責任という言葉をキーワードとして、新しい関係を作りましょう。
 




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<ホテイアオイ>
「楽しくもなくていいから普通の家庭欲しい」と息子呟きにけり    



27.アルコール問題維持連鎖の解消のために必要なこと 





アルコール問題維持連鎖を解消するために判断と対応を逆転させるのは難しいことです。
 
家族は、これまで10年も、長い人は20年も同じパターンで判断して対応してきました。
 
それを変えるには専門家の援助と自助グループへの参加が役立ちます。
 

(1)専門職の援助を継続して受けましょう
 
保健所、都道府県の精神保健福祉センター、アルコール治療を行っている病院や診療所のソーシャルワーカーや臨床心理士や保健師に相談し、支援を受けながら適切な判断と対応を実行できるようになることが必要です。
 

相談に来られたある家族のご主人は酒乱でした。
 
奥さんに「口数を少なくし、特に酒に関しては、一切干渉しない、世話を焼かないことにしてください」とアドバイスしました。
 
10日あとにおいでくださいました。
 
「自分を変えようと努力はしたのですが、ついつい言ってしまうことも多かったです。でも、夫が喧嘩腰でものを言うのが、少なくなりました。昨夜、子どもと私がテレビを見ていたら、夫も横に来て見ていました」と。
 

家族が判断と対応を変えると断酒はできなくても当事者との関係が変化し穏やかなものになります。
 
穏やかな関係が取り戻せたら当事者はいよいよ困ると、家族にSOSを出せます。
 
当事者と家族の関係の変化には、家族が判断と対応を変えることが最初の一歩です。
 

(2)家族の自助グループに参加しましょう
 
家族は長年、孤独な中で苦闘してきました。
 
同じ状況を体験してきた人たちが自助グループに集まっています。
 
断酒会はアルコールをやめたい当事者とその家族の自助グループです。
 
そこでは家族会も開かれています。
 
またアラノンや家族の回復12ステップはAAメンバーの家族の人たちが集まっています。
 
同じ立場の家族の話を聞き、自分も話してみると受け入れられ、理解され、認められます。
 
孤独から抜け出て、力を得ることができます。
 

(3)当事者の自助グループに参加しましょう
 
長い、苦難な家庭生活で、家族の当事者への認知や感情には歪みが出ています。
 
誤解し、決め付けていたことも多々ありました。
 
当事者の自助グループの断酒会やAAに参加して生の発言を聞きしましょう。
 
当事者への認識や感情や行動に変化が生じます。



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<ホトトギス>
「疲れた」と遺して逝きたき 我の苦を 君は知らずや今日も飲み行く    



28.家族が専門家の援助を受ける目的  





アルコール問題をもった家族への専門家の援助は、次のような目的で提供されます。
 
(1)家族自身の苦悩からの解放
 
家族はほとほと疲れ果てています。
 
15%は精神科の治療を受ける必要があるほどのストレスの状態です。
 
専門職により家族の苦悩がねぎらわれ、受け止められ、理解されることで家族は癒されます。
 
癒されることで自信をもち、自己を取り戻していけます。
 

(2)アルコール依存症者の回復への支援
 
家族の苦しみの根底に、当事者の飲酒とそれによる関連問題があります。
 
「飲酒する人をほっといて、あなたは幸せになりなさい」と言われても、それは家族には無理なことです。
 
「夫は連続飲酒で部屋にひきこもって飲みっぱなしです。でも、私はその影響を受けずにルンルンで生活をしています。鼻歌をうたいながら料理を作っていたら、夫が起きてきて、洗面器の水を私にぶっかけました」と。どこかおかしいですね。。
 
家族は、断酒による回復を切に願い、祈り、その病気からの回復を支接しましょう。
 

(3)アルコール家庭の子どもの成長を守る
 
子どもたちの成長を守るために、家族は援助を受ける必要があります。
 
アルコール家庭の子どもに関する研究を初めてしたマーガレット・コークは「アルコール問題の最大の被害者は子どもたちだ」と言っています。
 

私は、40年前に、この仕事についたとき、当事者が断酒できると家族は幸せになれると単純に考えました。
 
その後、年月がたってわかったことは、アルコール依存症の回復率は40%前後で、半数以上の人は、断酒できないままに死んでいくという事実です。
 
当事者が断酒して初めて子どもが幸せになれるのであれば、半数以上の子どもには幸せな日は来ないのです。
 
当事者の回復への援助と同時にしらふの親を援助し、その親が親の役割を果たすことで、子どもの順調な成長を支援する必要があります。
 

連休明けにある家族が相談にこられました。
 
「夫が酒乱で、酔うと5年生の長男に2時間も正座させて説教するのです。
 
妻がとめに入るとさらにエスカレートしてしまう」と言う相談でした。
 
長男に「アルコール依存症と言う病気に父親がなっており、母親は長男のつらさがよくわかっていることを伝え、今後、問題解決のために、家族教室とカウンセリングに通うから、心配しないで」と伝えました。
 
そして長男が父親に説教された後には「つらかったね、よく辛抱したね。お父さんの病気が言わせていることで、お父さんもあんたのこと大事やとは思っているのは確かやからね」と声をかけてサポートしました。
 




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<マルバルコウ>
真心を持ちて当たるも届かなき 酒に曲がりぬ心悲しや  



29.アルコール問題解決への家族の新しい対処 





アルコール問題解決のために、家族は具体的に何に取り組めばよいのでしょうか。
 
(1)飲酒やアルコール問題に巻き込まれない、振り回されない、健康な距離をとる
 
まず、家族は当事者と距離をとり、巻き込まれないように、振り回されないようにしましょう。
 
あまりにも距離が近すぎると欠点ばかりが見え全体が見えません。
 
お互いに反応し過ぎてしまいます。
 
冷静になり、反応し過ぎないようにしましょう。
 

(2)アルコール当事者に干渉しない、世話を焼かない、コントロールしない
 
干渉しない、世話を焼かない、コントロールしないことにしましょう。
 
大人に対する尊重を実行しましょう。
 
特に飲酒に関する干渉や世話焼きはけんかの種になります。
 

(3)不安、怒り、恨み、被害者意識、自己憐憫から抜け出す
 
長年の間に、家族は飲酒する人に不信、怒り、恨み、憎しみなどの否定的な感情や被害感を強め、自己憐偶に陥っていました。
 
また、不安や自責感の中で家族は過度に自己を正当化し「私にはあらためることは何もない」と思っていました。
 
学習し、支援を受ける中で、過去の不幸に留まるのではなく、新たな生き方を求める必要があります。
 

ある家族は「飲酒している夫と私の間には流氷のような寒流が流れていました。いま勉強して二人の間に暖流を流すようにしています」
 
「てんかんの発作を起こしている人に怒りを向けません。アルコール依存症も病気で、怒りを向けるべきではありません」と言われました。
 
高知の小林さんの奥様がこんな話をして下さいました。
 
「断酒しても夫婦げんかが絶えなかった。何が何でも、許そうという決心してみた。夫婦げんかが少なくなっただけではなく、気がつけば主人は体験談を話すようになっていました」と。
 

家族の「あの長い間の苦労、病気で片づけられたのではたまらん」という気持ちもわからないことはありません。
 
しかし、家族にも、一つの飛躍がいるのかもしれません。
 

(4)アルコール問題の後始末をしない、代わって解決しない
 
飲酒でおきた問題を家族が後始末しないで、代わって解決しないで「あなたが起こした問題、片づけてね。手伝いはしますよ」という距離です。
 
それは借金についても、暴れて台所をめちゃめちゃにしても、失禁した時も同じです。
 

家族が後始末し、代わって解決すると飲酒で起きた問題が当事者に見えないのです。
 
否認しやすくなり、責任をとることにつながりません。
 
そして家族の怒りが残るのです。
 

(5)アルコール当事者を責めない、批判、非難、攻撃しない
 
飲酒している間家族は当事者を責め、批判し、非難し、攻撃してきました。
 
まるで飲酒する人は傷つかない人であるかのごとく対処してきました。
 
AAの冊子には「アルコール依存症者を責めないで下さい。アルコール依存症者を責めるのは、病気の犬をむち打つようなものです」と書いてあります。
 
アルコール依存症の人は、弱り果て、自分を責めているのです。
 
その人を責めると、立つ瀬がなくて反撃します。
 
家族が責めている限り、当事者は自分を責めることをやめ、断酒の必要性を認めようとはしません。
 

(6)信頼と尊敬、個人責任に基づく温かい家族関係を作る
 
アルコール依存症からの回復は、孤独な中でできる作業ではありません。
 
人と人との絆を築くことです。
 
人と人の絆の1つは家族との絆です。
 
信頼と尊敬と個人責任に基づく、温かい家族関係を作りましょう。
 
その他に、自助グループの仲間との絆、医療や相談機関の専門職との絆が断酒による回復を実現するエネルギーになります。
 

(7)娯楽や休養を生活に取り入れ、自分自身に関心を向けて自分自身を取り戻す
 
アルコール問題との取り組みは長期戦です。
 
息をつめてやっていたのでは、長続きしません。
 
時々、映画を見たり、おいしい物を食べたり、きれいなセーターを買ったりして息抜きして、自分を慰めてあげたり、励ましてあげたりしながら、長期戦に備えるようにしましょう。
 
休養や娯楽も生活の中に取り入れながら、アルコール依存症の当事者の最も頼りになるサポーターになりましょう。
 

また、これまで、家族は自分自身に関心を向けることもなく生活してきました。
 
自分がどのような人間でありたいのか、どのような妻でありたいのか、どのような親でありたいのか、どのように生きたいのかを問い直し、自分自身を取り戻すことに努めましょう。
 
そして自分に忠実に生きることを通じて自己実現を目指しましょう。
 
あなたの人生はあなたのものです。
 




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<マンリョウ>
酔う父を 見る目は辛く悲しそう 子等は黙りて二階へ上がる    



30.子供が育つ上でのアルコール家庭の問題点  





子どもが育つ上で、アルコール家庭とはどんな問題を持つのでしょうか。
 
(1)両親が不仲で、家庭に安心感や安全感がない
 
まず、両親が不仲ということがあります。
 
両親の喧嘩が絶えないのです。
 
子どもは家庭で安心しておれません。
 
子どもにとって安全ではないのです。
 
いつ喧嘩が始まるかわかりません。
 
「お父さんは暴力を振るうかもしれない、お母さんが家を出てしまうかもしれない」という不安を、子どもたちはいつも抱いています。
 

(2)両親の関心が飲酒や飲酒問題に集中していて、子どもに関心が向いていない
 
アルコール家庭では両親の関心は子どもに向きません。
 
酒を飲んでいる親は、飲むことに関心を集中させて、それが最優先です。
 
もう一人のしらふの親は、多くはお母さんですが、飲酒する当事者のことで、てんやわんやです。
 
子どもはかわいいし大事だと思っていても、子どもに関心を向けられないのです。
 
このような家庭で、子どもたちは親の関心や愛情を求めています。
 

(3)親子の情緒的な交流や愛情表現に乏しい
 
両親に精神的余裕がなくて、情緒的な交流や愛情表現が乏しくなります。
 
当事者は、毎日飲酒することが最優先になっています。
 
子どもをかわいがるとか、子どもの気持ちを察するとか、子どもを理解するとか、そういうことはなおざりになっています。
 
もう一人の親もこどもを大事と思っていても、一日一日生き抜くことで精一杯なのです。
 
子どもにとっては、酔っぱらいは酔っぱらいなのです。
 
「あの人が酔っぱらいだから、せめてもう1人の親は…・」と期待しますが、しらふの親も子供の期待に応えて交流し、愛情を表現することができないのです。
 

(4)問題解決への協調性や積極性に欠ける
 
アルコール家庭では生活の中で発生した問題の解決に協調して、積極的に当たるということがありません。
 
問題が起きると、お互いが相手の責任を言い立てて喧嘩になり、紛糾するのです。
 
ACの人たちは「こんなときは、普通どうやって解決するのですか。私たちは、普通がわからないのです」と言います。
 
物事の解決方法を、両親から家庭で学べずに育ちます。
 

(5)しつけに一貫性がない
 
両親が精神的に不安定なためにしつけに一貫性がありません。
 
今日は見過ごされたことが翌日は叱られたりするのです。
 
その結果、子どもは両親の顔色をみて、それに右往左往しながら、生きることを余儀なくされています。
 

(6)社会から孤立しているので、外部からの情報や支援が得られない
 
アルコール家庭は、親戚からも、隣近所からも孤立していきます。
 
子どもは飲酒にとらわれた親とその間題に巻き込まれた親以外の健康な大人に出会うことが少なく、大人のイメージが貧弱になり、大人に対するあこがれが持てないままに育ちます。
 




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<ミセバヤ>
節酒など出来る筈ない病とは 知らずに節酒を泣いて頼みぬ  



31.アルコール家庭で子供が生き抜くために身につける強固なルール 





子どもたちは、混乱した家庭を生き抜くために固有なルールを持ちます。
 
(1)感じるな
 
アルコール家庭では、年中いろいろなことが起きます。
 
それらを1 つ1つ感じていたのでは、身が持たないということです。
 
タフでなければ、この家庭を生きのびることはできないということです。
 
「感じるな」と子どもたちは自分の感情を押し殺し、何事もなかったかのごとく平気を装って生きています。
 
感情を押し殺し続けると自分の感情がわからなくなります。
 

19歳の看護学校の学生さんが「中年の男性が背後を通ると怖い」と言う相談でこられました。
 
その女性のお父さんは3年ほど前にアルコール依存症で亡くなっていました。
 
どんな思い出があるのか聞いてみました。
 
「私が高校生の頃、おばあちゃんとおじいちゃんと私とおかぁさんと弟が食卓で夕ご飯を食べていました。
 
お父さんが酔って大声で怒鳴りながら刃物を持って私たちの背後を歩くのです。
 
私たち5人は、一言もしゃべらずに、黙々とご飯を食べました」と話されました。
 
恐怖を押し殺していたのです。
 

(2)しゃべるな
 
「しゃべると恥をかくばかりだ。しゃべっても、誰もわかってくれない」と思い、わが家のことは誰にも話さずに、孤独な中で黙って耐えています。
 
人間への不信です。
 

(3)信じるな
 
「親を信じられないのに、誰を信じられるのか。
 
信じるから、裏切られる。
 
自分だけを頼りに生きるのが、一番安全なのだ」と、子どもたちはそう自分に言い聞かせて、人間不信の中で生きています。
 




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<ミツバツツジ>
職場にて銀婚式を祝わるも 我が結婚は長くも浅し    



32.アルコール家庭で子供が適応するための固有な役割
 
               (ウエッグシェイダーの分類) 





子どもたちは家庭の中で固有な役割を担います。
 
これは、生まれた順番やあるいはその家庭の状況などで、自分が選んだ役割をとります。
 
(1)一家の英雄(優等生)
 
一家の英雄(ファミリーヒーロー)、あるいは優等生などと呼ばれる役割をとる子がいます。
 
この子は長男、一人っ子あるいは長女などに多いです。
 
とても「よい子」するのです。
 
小さな大人と呼ばれるほど、勉強もよくでき、リーダーシップもある、スポーツもできる。
 
「どんな家庭で育てたら、こんないい子ができるのですか」と、担任の先生に言われたお母さんもいます。
 
一生懸命自分を「よい子」にして、背伸びして生きているのです。
 

(2)問題児(犠牲の子羊)
 
問題児、あるいはスケープゴート(犠牲の子羊)と呼ばれる子どもはアルコール家庭の葛藤の中で、ストレスに耐えられなくなって、行動を起こした子どもです。
 
不登校になる、非行にはしる、シンナーを使う、ひきこもる、あるいは家庭内暴力になる子どもたちです。
 

(3)透明人間(忘れられた子ども)
 
透明人間とも、「忘れられた子どもたち」ともいわれる子どもです。
 
この子どもたちには、まん中の子どもが多いです。
 
大人しく目立たず、その子がいなくても誰も気づかないようなスタンスをとります。
 
自分は何の役にも立たない。
 
自分には力がない。
 
早く家を出たい。
 
そこから、自分の人生は始まる。
 
それまで、辛抱して生きのびようとする子どもです。
 

(4)一家のマスコット(ピエロ)
 
最後は、末っ子や一人っ子に多い、一家のマスコット(ピエロ)という役割をとる子どもたちです。
 
この子は、家庭の中の緊張を自分がかわいく、子どもっぽくおどけることで、みんなを笑わせようとしているのです。
 
周りに関心を向け、自分自身に関心を向けない子どもたちです。
 
大人の顔色ばかり見て、自分をなおざりにしている子どもたちです。
 




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<ミヤギノハギ>
「酒飲むな」「ハイ、飲みません」といかぬ故 二十五年をもがき苦しむ  



33.アルコール家庭で育つ子供の問題  





では、アルコール家庭で育つ子どもたちは、どんな困難や問題を持つのでしょう。
 
(1)胎児性アルコール症候群
 
妊娠中の女性が飲酒すれば、アルコールは胎盤を通じて胎児にダメージを与えます。
 
胎児が酔っぱらっているのです。
 
その結果、知的障害、先天的な内臓の奇形、特有な顔貌などの障害を持って生れてくる可能性があるのです。
 
これはアルコール依存症の女性に限定したことではありません。
 
妊娠のどの時期にどれほどの飲酒をするとどのような障害が出るかが明らかになっていません。
 
米国では「妊娠する可能性のある性生活をしている女性は飲酒してはいけません」と啓発しているようです。
 

(2)発達障害
 
アルコール家庭で育つ子供たちは家庭のストレスによって発達が遅れがちです。
 
虐待を受けている子どもたちの心身の発達が遅れるのと同じなのです。
 
子どもたちの身体の発育、精神的な発育、知的の発育に障害がでるほどアルコール家庭は子どもにとってストレスフルなのです。
 
流産、早産も多いといわれています。
 

(3)情緒的問題
 
神経質だとか、内向的だとか、あるいは感情をうまく表現できない、怒りを病癖として表現するなどの情緒的問題を抱える率が高いのです。
 
アルコール問題のある家庭の子どもではその率は約30%で、アルコール問題のない家庭では約3%で、一番大きな差が出ています。
 

(4)神経症的症状
 
内科的な検査では異常がないのに、頭が痛い、腹が痛い、吐き気がする、微熱がつづくなどの症状が出ることがあります。
 
これは、心が原因で身体に症状が出ているのです。
 
心身症です。
 
家庭の高いストレスが原因と考えられます。
 

(5)行動障害
 
子どもたちに落ち着きがない。
 
チックがある。
 
いじめっ子になる。
 
暴力的になる。
 
あるいは衝動的だというようなことです。
 

あるお母さんは小学校3年生の男の子のことで学校に呼び出されました。
 
担任の先生から「クラスで気に入らないことがあると、教室のベランダの柵によじ登って、飛び降りようとするのです。何か思い当たることはありませんか」と言われました。
 
団地の7階に住んでいて、アルコール依存症のお父さんは酔っぱらって腹が立つとベランダから飛び降りると言って騒動を繰り返していました。
 
このように子どもの衝動性が高くなるのです。
 

(6)虐待
 
アメリカでは、児童虐待の6割がアルコール家庭で起きているといわれています。
 
今から25年ほど前に、大阪の児童相談所と保健所が、子どもの虐待の調査をしました。
 
25%がアルコール家庭で起きた虐待でした。
 
飲酒した親による虐待と、しらふの親が配偶者の飲酒間者のストレスで子どもを虐待していました。
 

(7)家出・自殺
 
約25年前の、米国のアルコール・薬物の治療施設へーゼルデンの調査では十代の家出した子どもの56%、十代の自殺した子どもの66%はアルコール家庭の子どもだったそうです。
 

アルコール家庭が子どもたちにどれほどつらい生活を余儀なくさせているかがうかがえます。
 
単純にこの数字を日本に当てはめますと、日本では年間約600人の10代の子どもが自殺しています。
 
そのうち約400人がアルコール家庭の子どもだということです。
 

(8)青年期精神障害
 
久里浜病院の鈴木先生が精神病院に入院している青年期の人たちを調査したところ、境界性パーソナリティ障害の患者はアルコール家庭で育った人が多かったと報告しています。
 




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<ミヤコワスレ>
「もうイヤ」と大きな声で叫びたき 我の苦しみ君は知るかや    



34.アダルト・チャイルドの問題 





1980年代から、アルコール家庭で育って大人になった人たちをアダルト・チャイルドと呼び、注目するようになりました。
 
(1)アダルト・チャイルドの定義
 
アダルト・チャイルドとは「心理的社会的に成熟するために幼時期、思春期をやり直す必要のある人」とクラウディア・ブラックは定義しています。
 

40年前、私はこの仕事に就きました。
 
保健所で働いていましたがアルコール問題の相談に来られる家族に連れられてくる子どもたちに会うと心が痛みました。
 
「どんなにしてでも断酒してもらおう。家族や子どもが気の毒すぎる」と思いました。
 
大勢の方々が断酒してくださいました。
 
夫婦で断酒会に通い、断酒が続いて会長さんになられて仲間のために尽くしてくださる人も出てきました。
 
約25年前ごろから、断酒された家庭の成人した子どもたちの問題が持ち込まれるようになりました。
 
それは引きこもりやうつ病や子どもへの虐待などの問題です。
 
親が治療を受けて断酒し、家族も回復に協力し、家庭は立て直しができたように見えても、子ども時代、アルコール問題で傷ついた体験は癒されることなく障害として社会適応に困難を発生させていました。
 

1990年から、この人たちを対象にアダルト・チャイルドのグループを始めました。
 
それまでは親たちがアルコール問題を克服すれば、苦労した子どもたちも救われると、これで傷ついた心が癒され健康な大人になってもらえると、楽観的に考えていたのです。
 
子ども時代をアルコール家庭で育ったがゆえに、情緒的社会的に成熟することができずに大人になってしまった人が、大人として社会での適応に困難を抱えているのです。
 
25歳前後でうつになったり、対人関係に苦しんだり、摂食障害やギャンブル依存、薬物依存という問題を持って、医療機関に登場されるということです。
 

(2)アダルト・チャイルドの障害
 
アダルト・チャイルドの障害の1つは対人関係の障害です
 
「2.アルコール家庭で子どもが生き抜くために身につける強固なルール」で記しましたように人間不信と感情の抑圧を身につけて育った子どもたちは表面的な人間関係はこなせても、親密な人間関係に困難を抱えます。
 

2つ目は親機能の障害です。
 
成人して親になった時に親として子どもを愛せない、子どもをかわいがれない、子どもとの遊び方がわからないという問題です。
 
子ども時代に愛された経験、かわいがられた経験がなく、既に児童虐待になっている場合もありました。
 

3つ目はうつ病、抑うつ状態です。
 
抑うつ状態やうつ病になりやすいのです。
 

4つ目は強迫的、嗜癖的障害です。
 
強迫神経症や摂食障害、パニック障害、ギャンブル・アルコール・薬物などの依存症などの病気になりやすいことです。
 




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<ミヤマカイドウ>
家という建物あるも家庭なき 中に育つも 子等は曲がらず    



35.アダルト・チャイルドの回復 





(1)安全な場所と安全な仲間が必要
 
では、アダルト・チャイルドから回復していくためには同じアダルト・チャイルドの人たちの仲間とグループ活動の場が必要です。
 
大阪には、専門家が関わっているアダルト・チャイルドのグループは、今ありませんが、自助グループはあります。
 
多くのグループにアルコール問題はなかったけれど、親が暴力的な家庭、親がギャンブル依存の家庭、親が病弱、親が貧しくて関わってもらえなかった家庭の子どもなど機能不全の家庭で育った人たちもアルコール問題の家庭の人たちと一緒にグループ活動をしています。
 

(2)回復は4つのプロセスで進める
 
まず第1のプロセスは子ども時代を思い出して仲間の中で語ることです。
 
子ども時代の傷ついた体験を語り、それが仲間に受け入れられ、理解され、共感される中で癒されていきます。
 
第2のプロセスは子ども時代の体験が現在に与えている影響を問い直し、語ることです。
 
第3のプロセスは取り入れている親の価値観を問い直すことです。
 
そして第4のプロセスは新しい生活技能を身につけることです。
 
断れない、反論できない、自分を守れないなどの状態から断り上手になり、自分の意見を表現し、自分を大事にするようになれることです。
 

(3)回復は、過去の親子関係や家庭生活に関して親の承認も謝罪も必要としない
 
アダルト・チャイルドの回復に取り組む中で、これまで自分の性格の問題と思って苦しんでいたが、子ども時代の家族関係や親子関係によるものだとわかった時、子どもたちはそれを親に認めさせたい、詫びてもらいと思います。
 
しかし、親は子どもが期待するような返事はしてくれません。
 
親は親で自分を正当化します。
 
親を変えようと取り組むことは寄り道になりアダルトチャイルドの回復にはプラスになりません。
 




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<ムクゲ>
深き雪 耐えて芽を出す春を待つ いじらし花に我重なりぬ  



36.アルコール家庭で育つ(った)子供のために親ができること 





さて、これから親として、大人として何ができるでしょうか。
 
(1)相談できる専門家や自助グループの仲間を持つ
 
子どもの問題を相談できる人を持ちましょう。
 
それは、医療機関のスタッフや保健所の保健師や自助グループの子育て経験のある先輩かもしれません。
 
飲酒中心の生活や当事者の飲酒に巻き込まれていた期間親子関係はブランクになっていました。
 
相談する人の意見を聞きながら子どもと向き合いましょう。
 

(2)子どもにアルコール依存症について話す
 
子どもの年齢に応じて、アルコール依存症は回復可能な病気で、親のせいでも子どものせいでもなく、子どもには責任がないことを子どもに伝えましょう。
 

(3)子どもの話を聞き、過去と現在の苦悩を理解する
 
できるだけ子どもの話を聞いて、子ども時代の苦しみや今の苦しみをしっかりと理解する努力をしていきましょう。
 

(4)子どもへの関心と愛情を表現する
 
子どもたちへの関心と愛情を、積極的に表現していきましょう。
 

(5)家庭生活を平常に戻す
 
アルコール問題をもった家庭はかなり偏っていました。
 
朝晩挨拶をし、家族で一緒に食事をし、正月や祭りを祝い、断酒記念日を祝い、日常生活を普通に戻して下さい。
 

(6)子どもをサポートしてくれる大人を見つける
 
子どもにとって親が最適の相談相手とはいえません。
 
親以外の相談できる人をさがしましょう。
 
カウンセラー、年上のいとこ、子ども会の役員など適当な人を紹介しましょう。
 

(7)家庭外に、子どもが参加し、発散できる場を見つける
 
例えば、少年野球やサッカー、子ども会活動、部活などです。
 
子どもたちは家庭のことに心をとらわれて、いつも家庭のことを心配しています。
 
たとえ1時間でも2時間でも、家庭のことを忘れて夢中になれるような、そんな時間を過ごす場所や仲間を紹介してあげましょう。
 

(8)親子関係を修復し、手直しする
 
子どもたちが体験した悲しみ、苦しみを償うことは難しくても、親が子どもを理解し、関係の立て直しをすすめることはできます。
 
気長に、取り組みましょう。
 




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<アーモンド>
いくたびも賭けし主人に背かれて 二十五年をむなしく流さる    



37.若年者の飲酒  





35歳以下でアルコール治療を受けている人は約5%前後です。
 
日本の1人当たりのアルコール消費量は1993年ごろから横ばいになり、次第に減ってきています。
 
しかし、若者と女性の飲酒量は減っていないといわれています。
 

中学生では、男子生徒の半数は飲酒経験があると答えています。
 
高校の男子生徒では約20%が週に1回以上は飲酒し、女子生徒でも約8%は週に1回以上は飲酒しています。
 
男子高校生の11%は、週1回以上飲酒し、何かあると飲まずにおれないという精神依存があり、過去に飲酒によるトラブルを経験しているという問題飲酒です。
 

近年、初飲年令、習慣飲酒の年齢が低下しています。
 
若い女性たちの飲酒が一般化しており、飲酒の男女比が若いほど差がなくなっています。
 




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<アセビ(馬酔木)>
ようやくに入院させて主なき 静かな家に手足伸ばせり  



38.アルコールが若年者に与える害  





1922年に、未成年者飲酒禁止法ができました。
 
アルコールの自動販売機ができてから実効性のない法律になっています。
 
この法律は、未成年で飲酒した人を罰するのではなく、未成年と知りながら酒を売った人、未成年と知りながら酒を飲むのを見逃した人が罰せられる法律です。
 
若い人たちは「何で、僕らが飲酒したからと言って、目くじら立てて、悪いというのや」と言うのですが、それには次のような理由があるのです。
 
(1)脳の萎縮
 
アルコールは脳に一番大きなダメージを与えます。
 
未成年の時期というのは、脳が一番成長発達する時期です。
 
そこにアルコールがはいると脳が早々に萎縮します。
 
脳が萎縮すると理性的な判断、創造性、記憶力に障害がでてきます。
 

(2)早期のアルコール依存症の発症
 
早く飲み始めれば飲み始めるほど、早くアルコール依存症になるといわれています。
 
20歳過ぎて酒を飲みだし人がアルコール依存症になるのに、平均清酒3合で10年の年月が必要ですが、10代で飲酒を始めた人は清酒3合で3年の年月に過ぎません。
 

1999年に、新阿武山クリニックで35歳以下の初診者を調べてみました。
 
1年間で12名でした。
 
5名が男性で、7名が女性で、その女性のうち3名は21歳でした。
 

(3)生殖機能の障害
 
アルコールが与える影響の最たるものは脳の萎縮で次は生殖器です。
 
男性はインポテンツになり、女性は卵巣などの機能障害により生理不順が生じます。
 

(4)知能の低下
 
脳が萎縮しますから、記憶力、創造力など知能が低下します。
 

(5)心理的社会的未発達
 
心理的社会的に発達が阻害されます。
 
思春期から青年期は、大人になる段階で人間への成長・発達に大きくかかわってきます。
 
その時期に飲酒を覚えてしまって、その結果悩むこと、苦しむこと、嫌なことを酒の力を借りて乗り越えてきました。
 
しらふで悩んで苦しんで、その中で社会適応力をつける時期を、酒をたよりに生きた結果、心理的社会的に年齢にふさわしい成長ができないままに、足踏みしているのです。
 
具体的には自己中心性、忍耐力の不足、共感能力の未発達といぅ問題です。
 
大人として社会の中で生きていくのに必要な社会性や心理的な発達に大きな問題を残すことになります。
 
その困難を抱えての断酒による回復ですので、再発も生じやすく、低い回復率になります。
 

(6)肝機能障害
 
肝臓も思春期・青年期の時期は発達段階です。
 
そこにアルコールが直撃しますと、肝障害を起こし、早くに肝硬変になります。
 
新阿武山クリニックに17歳の方がアルコール依存症で受診されました。
 
既に肝硬変で、半年後にはお亡くなりになりました。
 




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<アネモネ>
長き年苦しまさるるこの酒を 「病」と一言主治医は告げり    



39.今後の若年者のアルコール問題への対応   





(1)アルコール教育
 
アルコール教育の見直しが必要です。
 
保健体育の先生によって中学や高校でアルコール教育の授業がされています。
 
研究によると現行のアルコール教育は成果を上げていないようです。
 
その授業に自助グループの方が参加して体験をお話しくださると、1年後にも生徒たちは覚えているそうです。
 

米国ではアルコール教育は小学校から始まるようですが、そこでは自尊心を高める教育がおこなわれているそうです。
 
「あなたは大切な社会の一員、家族の一員です、かけがえのない個性であり、存在です。
 
自分を大切にしましょう」ということかと思います。
 

(2)未成年者の飲酒に対する大人の責任ある態度、家庭での飲酒に対する親の態度
 
未成年の子どもたちが初めて飲酒したのは家族や親せきの大人に誘われてです。
 
また、親が飲酒する家庭の子どもは未成年から飲酒する率が高いとされています。
 
大人が未成年者の飲酒の危険を理解して、大人として責任ある態度をとる必要があります。
 

(3)治療・援助グループの中での若年者のサブグループ
 
若くしてアルコール依存症になった人たちは、ある意味心理的社会的未熟など共通している部分があります。
 
その部分への援助支援が必要とされています。
 
AAではヤングのミーティングがあります。
 
断酒会も平均年齢60歳ですからヤングのグループが必要かもしれません。
 

(4)アルコール依存症の治療・援助への家族の理解と協力
 
当事者が若い場合、両親が取り組むととても効果を上げると感じます。
 
「お父さんが僕のために、勉強してくれている、断酒会に行ってくれている」と。
 
このインパクトは大きいと思います。
 
両親そろって取り組むと当事者の回復率も高いように思います。
 




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<アマリリス>
我が胸に灯り点せし主治医の言葉 「回復可能な病」と聞けば  



40.女性のアルコール依存症の分類  





女性は男性に比べてアルコール依存症になりやすいのです。
 
これは女性ホルモン、体脂肪率、体格などが関係するといわれています。
 
女性の場合、五つのタイプに分けられます。
 

(1)1次型
 
男性アルコール依存症の主流のタイプです。
 
両親や祖父母に大酒飲みの人やアルコール依存の人がいて、25歳以前から、習慣的に飲むようになって、特別なきっかけはなかったが飲酒を続けたタイプです。
 

(2)反社会人格型
 
10代のころから非行歴があり、シンナーや覚醒剤やマリファナなどの薬物を使い、そこにアルコールが加わったというタイプです。
 

(3)症候型
 
うつ病、てんかん、発達障害、強迫障害、境界性パーソナリティ障害など他に精神科の病気があって、その生きづらさをまざらすために飲酒に走ったタイプです。
 

(4)急性喪失型
 
女性に多く見られるタイプです。
 
親、配偶者、子どもなどの大切な人を亡くした、家業が倒産した、夫が浮気したなどの喪失が引き金になり、大量飲酒につながったタイプです。
 

(5)慢性葛藤型
 
女性特有のタイプの一つです。
 
育児ノイローゼからキッチンドリンカーになる。あるいは専業主婦が大事に育てた子どもが進学や結婚で家を出た後に取り残された思いから、それをまざらすために飲酒に走った空の巣型というタイプです。
 
高齢になって認知症になり、不安が強くなってそれをまざらすために飲酒につながったタイプです。
 




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<アヤメ(菖蒲)>
「家族より己の為に酒断て」と 見舞い来し娘(こ)は父に諭さん  



41.女性のアルコール問題への今後の対応   





(1)アルコール依存症になりやすいことの啓発
 
社会に女性はアルコール依存症になりやすいことを啓発する必要があります。
 
男性の半分の量でアルコール依存症になることが周知されていません。
 
女性の場合は、20歳過ぎての飲酒でも、1日に清酒平均3合を5年、500mlの缶ビールなら3本、350mlの缶酎ハイなら3 本の酒量でアルコール依存症になります。
 

(2)胎児性アルコール症候群の知識の普及
 
胎児性アルコール症候群への知識の普及が大切です。
 
妊婦が飲酒するのは胎児への虐待です。
 
次世代の子どもを守るために妊婦の飲酒への知識の普及が必要です。
 

若い女性の飲酒が一般化し、それをあおる風潮もあります。
 
飲酒の危険を自覚してほしいと思います。
 

(3)母親の飲酒が子どもに与える影響
 
母親の飲酒が子どもに与える影響は、父親の飲酒が子どもに与える影響より深刻であろうと推測されます。
 
親とはいえ父親と子どもの間には距離があります。
 
母親と子どもには一体感があります。
 
母親が酒にとらわれ、崩れていく姿を見て育つのは子どもにとって実に切ないことなのです。
 

(4)アルコール依存症への家族の理解と協力
 
女性がアルコール依存症になった場合には、家族の協力がほとんど得られません。
 
女性がはじめて診察に来られるとき、夫が同行することはごくまれです。
 
母親か姉妹か子どもが同行しています。
 
診察についてこないだけではありません、妻の病気を知ろうとしないし、回復にも協力しないのです。
 
「おまえは、飲めないわなあ〜」と言いながら、断酒している妻の目の前で毎晩晩酌する夫は珍しくありません。
 
そうかと思えば「もう飲めるのとちがうか、一杯どうや」と飲酒を進める夫がいます。
 
「私が、必死になって断酒しているのに、それを知ろうともしないで、酒をすすめる。それが許せない」と、悔しがっていました。
 
家族の協力が得られない中でも女性のアルコリックの人たちは子どもの成長を楽しみに頑張って、断酒による回復を進めておられます。
 

(5)治療・援助グループおよび自助グループの中でのサブグループ
 
医療の場で、女性ミーティングが開かれています。
 
自助グループでも断酒会にはアメジストの会、AAではレディースミーティングが開かれています。
 
女性の場合には、男女混合のグループ以外に女性のみのグループが必要とされ、回復率に貢献しています。
 

(6)女性の生き方の多様性と新たな価値観
 
今、専業主婦の人たちは、「私は、お金を稼いでいるわけではないので・・・」と肩身の狭いことのように思っています。
 
一方、職業をもっている人は「家事や子育てがじゆうぶんにできていなくて‥・」と肩身の狭いことのように思っています。
 
女性たちの生きかたの多様性や価値観の多様性が、社会で認められ、受け入れられていく時代が来てほしいものと思います。
 




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<アルストロメリア>
同室の仲間の話を聞き分けて 善きを見習い悪きは真似ぬ  



42.高齢者のアルコール問題の特徴  





(1)増加傾向
 
高齢者のアルコール依存症はとても増えています。
 
今、アルコール依存症当事者の25%から28%を占めるといわれています。
 
それは医学が進歩し、栄養状態がよくなり、衛生状態がよくなった結果平均寿命が伸び、それに伴い高齢者人口が増加し、そして、アルコール依存症当事者も高齢化が進んでいるのです。
 

(2)酒による老化の加速
 
高齢のアルコール依存症当事者は、老化が実年齢よりも進んでいます。
 
身体面では10歳から15歳加齢しており、脳は実年齢より15歳から20歳加齢しています。
 
飲酒していた当時は老けていました。
 
酒をやめ始めた頃は、ひと回り小さくなって老け込んでいました。
 
半年断酒した頃から年齢相応になり、次第に若返っていかれるように思います。
 
断酒された人たちは、何よりも活き活きしておられる方が多いと思います。
 

(3)喪失体験
 
高齢期は、喪失の時期といわれます。まず定年で「これまで仕事が命です」と言っていた人でさえ、仕事を失わざるをえなくなります。
 
癌だとか心臓病という大きな病気が発見されたり、配偶者や頼りにしていた子どもを亡くすなどの喪失を体験することが多いのです。
 
若いときなら頑張って取り戻そうという気力や体力がありますが、高齢期になると大きなショックとして長引き、飲酒にとらわれやすくなります。
 




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<アンズ>
この部屋でこのベッドにて悟らされ 断酒に目覚めん第五病棟の    



43.高齢者のアルコール依存症の分類  





(1)早発型
 
20代や30代で、アルコール依存症になって治療を繰り返しながら60代を迎えた人たちです。
 
精神病院に40回入院したといわれる人たちの多くはこのタイプです。
 

(2)高年悪化型
 
若いころから飲酒してきたが、仕事が歯止めになって何とか定年を迎えることができました。
 
定年後毎日が日曜日になり、昼間から飲み、朝から飲むようになり、定年後3〜4年で、トイレが間に合わない、酔っ払って転んで怪我をするなどの出来事で治療を受けることになります。
 
−番多いタイプですが回復率は高いです。
 

(3)遅発型
 
若いころからあまり飲酒しなかった人が、高齢になって喪失体験がきっかけで4〜5年の間に急激に大酒飲みになり、アルコール依存症になったタイプです。
 
このタイプも高い回復率です。
 




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<イカダカズラ>
他人事と思いし断酒夢ならぬ 長きトンネルに光射し込む  



44.今後の高齢者アルコール問題に対する対応 





(1)高齢者がアルコール依存症になりやすいことの啓発
 
高齢期はアルコール依存症になりやすい時期だということをもっと啓発する必要があります。
 
老化によって体力が落ち、代謝力が落ちています。
 
そこに同じペースで同じ量を飲んでいると、アルコール依存症になります。
 
40代をピークに飲酒量が減少するのが普通なのです。
 

(2)治療・援助グループや自助グループにおけるサブグループ
 
米国にはAAの中に高齢者のサブグループがあるそうです。
 
自助グループの多くの人たちが断酒して社会復帰することを目標にしています。
 
高齢者の場合は断酒して、仕事以外の生きがいを見つけるのが共通するテーマかと思います。
 
それを考えるとサブグループの必要性も理解できます。
 
今のところ、日本ではサブグループはありません。
 

(3)アルコール依存症への家族の理解と協力
 
高齢の当事者の場合、家族の協力が得られない場合が多いのです。
 
多くの家族が長年飲酒問題で苦労していますので「長い間、好きな酒を好きなだけ飲んで、好きにしてきたのに、いまさらやめてもらうために協力する気はありません」と言われる配偶者も珍しくはありません。
 
高齢期は、特に男性にとってはさびしい時期です。
 
家族の理解と協力が得られるか否かは回復率を大きく左右します。
 

(4)壮年期の生き方、価値観の見直し
 
青年期から壮年期、多くの男性は「仕事が命、会社が命」などと言って生きてきました。
 
定年になって仕事を失って気づけば、これまで家庭を顧みなかったので家庭の中に居場所もなく、会話したいと思っても妻や子どもの会話に入っていけないという寂しい生活になり、酒だけが友達という悲しいことになりかねないのです。
 
青年期、壮年期、何に価値をおいて生きるのかということを考えなおすことが、この長い人生を充実させることにつながると思います。
 




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<イキシア>
ホームにて酒に崩れし人見れば 「あの日の己」と恥じつ呟く    



45.コミュニケーションの5段階  





飲酒のまっただなか、飲酒する人は常に不機嫌で怒っていました、その家族も不機嫌で怒っていました。
 
アルコール家庭は怒りの渦の中にありました。
 
その中で子どもは、親の顔色を見ながら育ったのです。
 
不安と不信の中で、家族関係は悪化していました。
 
回復のためには当事者も家族も理解に基づく暖かい人間関係をつくるために意識的に努力が必要です。
 
お互いが自分を表現し伝え合う(コミュニケーション)のは理解と共感を築く第一歩です。
 
相手を理解し相手の気持ちをより深く感じることが大切です。
 

きょうは、アルコール家庭におけるコミュニケーションを勉強しましよう。
 
コミュニケーションには5つの段階があるといわれています。
 

(1)表面的で、紋切り型の話
 
第一段階は、決まりきった言葉での会話で、これは人をとても孤独にします。
 
例えば、一日外で働いて帰った男性は「めし、風呂、寝る」の三つの言葉で済ますといわれます。
 
言う人は用事を済ませているからいいかもしれませんが、聞く側にとっては人間扱いされていない思いがし、とても寂しいことでしょう。
 

(2)他人のことだけを話題にする
 
第二段階は、他人のことだけを話題にし、自分のことは話さないのです。
 
相手が安心できない人だからです。
 
うっかり自分のことを言おうものなら、腹を立てて噛みついてくるかもしれないので、警戒して他人のことだけを話題にして済ますのです。
 

(3)他人のことに少しだけ自分のことを加える
 
第三段階は、他人のことに少しだけ自分のことを付け加えて話します。
 
これは安全な範囲で、自分を表現しているのです。
 

(4)自分の考え、感情、都合を話す
 
第四段階は、自分の考えや感情や都合をオープンに話します。
 
正直に隠さないで、自分を表現しているのです。
 
話し手と聞き手が感情を共有できます。
 
初めて理解が生まれ親密な関係ができます。
 

(5)開放的で誠実な会話
 
第五段階は、開放的で誠実な会話です。
 
これは、思ったことを正直に何の恐れもためらいもなく、自由に話せるということです。
 
自由に率直に自分を表現しているのです。
 
そして、相手をありのままに受け入れるのです。
 




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<イチハツ>
入院の十月4日を切りにして 断酒で迎える今日十月4日    



46.アルコール依存症になった人と家族の心理状態 





コミュニケーションは、よい関係づくりを目指して、お互いが自分のことを伝え合います。
 
そのためには相手の心理を知っておくことも必要です。
 
しかし、アルコール問題のある家庭で、何十年も生活してきたので相手のことは分かっていると思い込んでいる人も多いのですが、実はそれがえらい誤解だということも、ままあるわけです。
 

(1)否認
 
否認とは事実を事実として認めないということです。
 
アルコール依存症当事者は、アルコールに問題はないという第一の否認をします。
 
その否認を乗り越えた皆さんが断酒会に集まって断酒を目指しておられるわけです。
 
しかし、続いて第二の否認「飲酒以外に問題はない」があります。
 
問題は飲酒だけだった、断酒すれば問題はないということです。
 
これが否認と言うことは、アルコール依存症の回復は断酒したところで取り組まないといけない問題があるということです。
 
それはバランスのとれた新しい生き方ができるようになることです。
 

断酒は回復のスタートで、ゴールは酒をやめたことを軸にして、バランスのとれた新しい生き方ができるようになることで、スタート地点とゴール地点を御理解ください。
 

家族にも否認があります。
 
「夫は他の人ほどひどくない」と言う否認です。
 
次に、「私にはあらためることは何もない」と言う否認です。
 
実は、家族にも改めないといけないこと、あるいは間違っていたことがたくさんありました。
 

(2)自責感
 
飲んでいる人は自分を責めています。
 
飲酒する自分が悪い、自分の性格や人間性に問題があるかもしれないなどと考えています。
 
しかし、口から出る言葉は、「酒やめるくらいなら、死んだほうがましや」「飲みながら、太く短く一生終われば、満足や」と言います。
 
それが本心かと思いがちですが、実は、そうではないのです。
 

家族も自分を責めています。
 
特に親の立場の人は「育て方が悪かったか」「愛情が足りなかった」と自分を責めます。
 
奥さんたちも「わたしの対応がまずいからか」「性格的に合わないからか」と自分を責めています。
 

(3)自己嫌悪
 
当事者も自分を嫌っています。
 
酒を飲んで、周りに迷惑をかけたことを知らないわけではありません。
 
生きる価値がない。
 
死んで始末をつけたい。
 
こんな思いをしています。
 

家族も自己嫌悪に陥っています。
 
「結婚する前こんな性格ではなかったのに。陰気になり、がみがみ怒ってばかりで自分でも嫌になる」と自己嫌悪に陥っています。
 

(4)孤独
 
当事者は飲酒しながら徹底的に孤独でした。
 
社会からも職場からも相手にされず、それどころか家族にも相手にされず、独りぼっちで、取り残されていると思っていました。
 

家族も孤独でした。
 
わが家の状態が恥ずかしくて誰にも相談できない。
 
誰もわかってくれない。
 
社会から取り残されている。
 
誰からも相手にされていないと思っていました。
 

(5)被害感
 
当事者も被害感を持っていました。
 
酒を飲みながらも、「親が悪い」「妻が悪い」「上司が悪い」と思い、自分を被害者だと思っていました。
 

家族ももちろん被害感を持っていました。
 
「酒を飲む人が何より悪い」と思っていました。
 
そして、「こんな大酒飲みを育てた親が悪い」「こんな結婚すすめた仲人が悪い」と思い、被害者意識を強めていました。
 

このように当事者と家族の心理を比較してみると、酒を飲んで不幸だった人もその人のそばで生きていた家族も、同じような心理状態にあったということなのです。
 




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<オウトウ>
真剣に断酒に取り組む先輩の 真似して歩きて一年断酒    



47.アルコール家庭で見られるコミュニケーションの特徴  





アルコール家庭でみられるコミュニケーションの特徴を考えてみましょう。
 
(1)コミュニケーションを遮断する
会話を拒否する、無視するのをコミュニケーションの遮断と言います。
 
妻が話しても夫は返事もしない、夫が話しても妻は無視する。
 
相手にしないということです。
 

(2)問題解決に前向きな感情を伴わないコミュニケーションが多い
 
問題が起きても互いに非穀の応酬で、問題解決に向けて前向な感情を伴わないコミュニケーションが多くなるのです。
 

(3)話し合いの必要があっても、不安で切り出せない
 
話し合う必要があっても、不安でなかなか切り出せないのです。
 
いつ、どのように話せばわかってもらえるかと考えていると、なかなか切り出せないのです。
 

(4)話し合う前から、非難がましい態度や言葉が多い
 
話し合う前から、非難がましい態度や言葉が多く、お互いが構えてしまっているのでよいコミュニケーションにならないのです。
 

(5)相手への決めつけや指図が多い
 
相手への決めつけや指図が多いのです。
 
10歳の子どもでも、親の指図や命令を嫌います。
 
まして大人ですから良いコミュニケーションにはなりません。
 




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<オウバイ>
信楽の一周年に頂きし 花瓶に生ける断酒の喜び    



48.アルコール家庭でのコミュニケーションのルール 





アラノンの本に「アルコール中毒者との結婚生活のジレンマ」という本があります。
 
その中に、ある妻が心掛けている夫婦のコミュニケーションのルールがあります。
 
(1)話し合おう。しかし、攻撃はしない。
 
話し合いが結局は相手を攻撃することに変わってしまうということです。
 

(2)声は低く、快活に
 
明るい、低い声ではなす。
 
甲高い声を出せば、それだけで喧嘩腰のようになります。
 
ジメジメ言うと、いかにも非難がましく愚痴っぽく聞こえるでしょう。
 

(3)相手の不満や不平にも耳を貸す
 
自分の不満や不平ばかりを言うのではなく、相手の不平や不満も十分に聞きましょう。
 

(4)話題を広げすぎない
 
最初話し出したときには、些細なことだったのに、話題がどんどん広がっていって、最後は喧嘩で終わることになりやすいのです。
 

(5)要求や指図はしない
 
要求がましい態度や指図、決めつけ、命令はやめておきましょう。
 




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<オオアラセイトウ>
比べれば断酒の日々は浅けれど 地獄知りたる我には眩し  



49.自己表現のタイプ  





コミュニケーションでは、自分を表現することと相手の話を聞くことが両方大事で自分を表現するには4つのタイプがあります。
 
あなたはどのタイプですか。
 
(1)攻撃タイプ
 
自分のことだけ考えて相手の立場を考えず、一方的に相手を踏みにじるときもあります。
 
自分の気持ちは表現するが、怒りや嫌味など相手を責める言い方になりがちです。
 
か一つとなると言わなくてもよいことまでも言ってしまい、後で後悔します。
 

(2)受け身タイプ
 
自分より相手を優先して、聞き手にまわるのです。
 
自分を後回しにして、自分の思いや都合を言葉に出せないで、相手の言い分ばかり聞き入れることになります。
 
自分さえ我慢すればと、一歩引いてしまっているのです。
 
でも、内心では自分ばかり損をしている気分で、譲ってやっているのにと不満に思うことが多いのです。
 

(3)受け身一攻撃タイプ
 
初めは自分の意見や気持ちを言わずに相手の言い分を聞いているのですが、突如豹変して攻撃タイプに変わります。
 
そして相手の立場も考えずに爆発し、ためていた感情を攻撃的な言葉や行動で表してふてくされます。
 
これが受け身一攻撃タイプです。
 

(4)さわやかタイプ>
 
自分の気持ちや意見や都合を素直に表現しながら、相手を配慮します。
 
自分の意見、あるいは気持ち、都合、考えをきちんと表現しながら、相手の考えや感情や都合を聞いて意見が異なる場合でも、一方的に自分を押し付けることをしないで、感情的にならずに話し合って決めようします。
 

あなたはどのタイプでしたか。
 
ある家族は「私は、使い分けています。
 
家の中では、攻撃タイプ、家の外では受け身タイプです」と言われました。
 
またある方は、「私も使い分けています。
 
夫には攻撃タイプ、子どもには受け身タイプです」と言われました。
 




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<オオイヌノフグリ>
「もう飲まぬ」誓いて十日もたぬ君 「飲みたい」言いつつ四年に向う    



50.コミュニケーションの方法 





コミュニケーションの方法として、頼み上手と断り上手のポイントを押さえてみます。
 
(1)頼み上手のポイント
 
頼み下手な人は、自分が何もかも引き受けて、自分で抱え込んでしまって、ストレスを溜め、疲れ果てるタイプです。
 
人にものを頼めないのは、頼んで断られるのが心配で頼めないでいるのです。
 

頼み下手な人は、こんなふうに考えましょう。
 
私には頼む権利があり、相手には断る権利があると。
 
「頼むだけは頼んでみよう」と。
 

@頼み方
 
頼みたいことは具体的にはっきりさせ、相手が受け入れやすいものにする。
 
そして、「困っているので、してくれたら嬉しいわ」「申し訳ないけど、お願いできないかしら」と、自分の気持ちを添えて頼むことです。
 

A相手の対応
 
引き受けてくれても、頼み事は一度に一つにしておきましょう。
 
頼んで断られても、相手も事情があって断っているのであって、あなたが嫌いだということを意味しているのでもなく、これから何も協力しないといっているのでもないことを理解しましょう。
 
事情があって、引き受けられないということに過ぎないということをわかりましょう。
 

(2)断り上手のポイント
 
断り下手の人は、相手に悪い気がして断れないで、後で断らなかったことを後悔するのです。
 

* 誰にでも断る権利があると考えましょう。
 
頼まれた用事は断ったけれど、別に相手を否定したわけでも、相手を嫌いだと言ったわけでも、今後まったく仲良くする気がないと言ったわけでもなく、頼まれた用事を断ったにすぎないと割り切りましょう。
 

* 無理して引き受けても、結果的に相手との関係にはプラスにはならない。
 
無理しないで、断りたいときには断りましょう。
 

* 頼まれた時、即答の必要はありません。
 
頼まれごとを即座には断りにくいものです。
 
「ちょっと、考えさせて下さい」と答え、後日返事をすればよいのです。
 
断ると決めたら、早い日に、そして簡潔にきっぱり断りましょう。
 
ただ、妥協案を出すのは、よい方法です。
 




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<オオキバナカタバミ>
「納得の断酒してる」と言う君の 強き背中は少し淋しき  



51.アルコール家庭でのコミュニケーション(立木茂雄著「幸福の方程式」) 





先週の北摂の家族会のときに、相手の気持ちを察して行動するのは、あまり賛成できないという意見が出ていました。
 
それより自分のしてほしいことは、言葉に出してはっきりと求め、相手はそれに応じて行動するのが大事なのではないかと言うことでした。
 

立木先生は、カナダのアルコール依存症の夫婦のコミュニケーションを研究して博士号を取った方です。
 
論文の要点が「幸福の方程式」という論文にまとめられています。
 
(1)会話は友好的な調子で
 
夫婦の会話は友好的な調子で、たとえ相手が否定的な口調であっても、まずあなたは友好的に話しかけましょう。
 
相手が喧嘩腰でも、あなたは友好的に。
 

(2)相手の気持ちを肯定的に受け止める
 
相手の気持ちを肯定的に受け止めましょう。
 
相手の気持ちを善意に解釈して肯定的に受け止め、相手の話にじっくり耳を傾け、相手の感情や意見を尊重する態度をしっかり示しましょう。
 

(3)相手の行動を肯定的に察して信頼を示す
 
相手の行動を肯定的に察して、こちらから信頼を示しましょう。
 
相手の行動を善意に推察しましょう。
 
アルコール家族は当事者に対する認知が歪んでいるとイギリスの論文にあります。
 
この認知のゆがみというのは、夫の行動や言葉を善意に受け止められないということのようです。
 

(4)相手の面目が立っように、具体的解決策に議論を絞る
 
相手の面目が立つ具体的解決策に議論を絞ることです。
 
相手の面目を立たすような心遣いが、夫婦の会話でも必要だということです。
 

これまで、米国では、夫婦の関係は、それぞれ自分の言いたいことをしっかり言語化して表現し、表現されたことを理解して、そこから問題解決が始まるとされてきました。
 
この研究の結果は、お互いが相手に信頼を持って、肯定的に相手の気持ちを察して、そして相手の面目が立つように配慮しながら、コミュニケーションを持つことが夫婦のよいコミュニケーションの持ち方だという結論になっています。
 




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<オキザリス>
命より大事な宝投げ捨てて 新たに生きて断酒十年  



52.アルコール家庭で育った子の体験談
 
  「小さな希望」(男性23歳)





今日は、「親子ゆえ」という本をもってきました。
 
もう20年も前に出版された、アルコール家庭で育った子どもたちの手記を集めたものです。
 
最初に子どもたちの目にアルコール家族がどのようにうつっていたのか手記を通じて学びたいと思います。
 

日常生活の中に父が酒を飲んで、暴れるということがあたりまえになっていました。
 
それは、僕が生まれる以前からの父の酒の飲み方がそうだったようです。
 
こういう家庭の中で毎日を過ごしているうちに、酒を否定したり、憎んだり、そして酒を飲む人に対しての僕の考え方が出来あがりました。
 

「酒がこの世の中になかったら良いのに、酒を飲む人はろくでなしばっかりだ、自分はあんな親のようには酒を飲まない、酔っぱらいが死んだところで世の中のためにはとても良いことだ」と。
 
こんな考え方が自分の中に、正当な考え方として育っていました。
 

子どもの頃からの父の酒の飲み方は毎月規則的とも言えるぐらい決まっていました。
 
普段は仕事から帰って家で晩酌を1合か2合ぐらいするだけなのですが、「ちょっと今日は遅いな、飲んで帰ってくるのとちがうか」と思った日はほとんどそのカンというか、予想がまちがってはいませんでした。
 
そして帰ってくるなり、いろいろな人の悪口や、不満や批判やらを言いはじめるのでした。
 
そして母はまるで火に油をそそぐような一言をいつも言うのでした。
 
それから、夫婦ゲンカが始まって、そして、家中のふすまや、いろいろな電気製品などを壊すのでした。
 
そんな日が何日か続き、父はその間中食事もとらずに飲み続けているのでした。
 
僕自身は、昼は学校に行っていましたが、授業中もときどき、今頃、父は飲んでいるのか、家に居るのか、寝ているのかなどということを考えていました。
 
そして学校から帰ると、父は居れば寝ているというより、そこにころがっているという感じでした。
 
いつもは割ときちっとした服装をしているのに、そんな時は酒を買いに行った時にころんだのか、汚れていてもそのままで、口からはよだれを流して苦しそうに寝ころがっているのでした。
 
しかし、そんなことがあたりまえになっている僕にすれば、そんなおっさんはただ汚らしいというだけでした。
 
そして、そんなに苦しいにもかかわらず、目が覚めると、父はまた酒を買いに行くのでした。
 
そんな父を見ながら、どうしてあんなにまでなっても酒を飲むのか、不思議なことばかりでした。(2ページ省略)
 

学校では、その頃、父が酒を飲んで暴れていても、そんなことがあるとは絶対に言わなかったし、言うような友達もいなかったと思います。
 
目立ちもせず、特に優秀でも、悪くもなく、それなりに学校生活を送っていたように思います。
 
自分の家は不幸だとは何度となく思っていましたが、自分の家が不幸だという風には人に見せることはありませんでした。
 
なるべく普通で、なるべく当たり前に見てもらえるように過ごしてきたし、今も過ごしているような気がします。
 

助けてほしいと思い、親せきやいろんな人に父の酒をやめさせるように、説教してもらったりはしましたが、しかし同時に、もうこの父は、こうゆうものだという諦めしか持っていませんでした。
 
だから他人からは普通に見えるように自分は振舞いたかったような気がします。
 

しかし、アルコール依存症が病気であって、父も治療し、断酒会に行けば回復するかもしれないということを知った時から、あきらめずにすむかもしれないという希望がでてきました。
 

今、父は断酒して一年たちました。
 
これからはどうなるかわかりません。
 
しかし、今度は的はずれなことはせずにすむかも知れないと思います。
 
「親子ゆえ」日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会編
 

1回だけこのお父さんに、関西断酒学校でお会いしたことがあります。
 
とても内気そうなお父さんでした。7年断酒を続けたあとに癌でお亡くなりになりました。
 




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<ガクアジサイ>
あのチャンス あのタイミングが合えばこそ 断酒の君が今ここにあり  



53.アルコール家庭で育った子の体験談
 
  「生きていてよかった」(女性20歳)





私は、先の事を考えると不安でたまらなくなる。
 
時々、しんどくて一人で、大声で泣いてしまう。
 
生活している中で多くの人達と接していると、とても疲れる。
 
一人でじっとしていたらどんなに楽だろうかと思う。
 

現在、父は断酒して約半年経つ。
 
父が酒を飲んで荒れていた昔を思い出すと、もう過ぎた目の出来事なのに、まるで昨日のことのように思えて涙がとまらなくなる。
 

実際、家が荒れていた状態のまっただ中にいた頃は、感覚が麻痺していたと思う。
 
父が酒を飲んで母を怒鳴り、暴れまくっていた時、手に負えず泣いている母を見ていると、つらくてたまらなかった。
 
自分が怒鳴られるのは、くやしかったけれど、耐えられた。
 

皆の協力で、父がアルコール症専門のSクリニックへ通い始めて、断酒会へ行くようになり、やっとのことで断酒に成功した。
 
私も母も、心から喜び、協力してくれた人達に感謝した。
 

私は、いつ頃からか、自分の事を考えなくなっていた。
 
いつも家の中の状態にばかり気をとられていた。
 
自分の将来の事なんて、全然考えていなかった。
 
アダルト・チャイルド(AC*)の会に通い始めた頃、私は、やっと自分という存在に気付いたようだ。
 
それまで、自分の事といえば、ほとんど投げやりの状態だった。
 
考えようによっては、それはとても楽だったかもしれない。
 

私はACに行くまで、いつも一人ぼっちだと思っていた。
 
誰も信用できなかった。
 
でも、ACで私と同じような仲間に出会い、私だけじゃなかったんだと勇気づけられた。
 
そして私は、自分自身のことを少しずつ考えるようになった。
 
その時初めて、今まで私の周りにいた友達の大切さも分った。
 

以前なら、悲しい気持ち、つらくてやりきれない気持ちを押し殺していた分、心から笑ったり、感動したりする事もできなかった。
 
今の私は、とても感情豊かになったと思う。気持ちが解放された気分だ。
 
でも、正直に言えば、長い間こういう事はしていなかったからとても疲れる。
 
毎日毎日、自分自身の事で悩んでいる。
 
過去についてあれこれ思い悩むのもしんどいけれど、これから先の事を考える事は、それ以上に疲れる。
 

今でも、昔の父を思い出すと、許せない気持ちになる。
 
でも昔の事を言っても何も始まらない。
 
しんどい事も多々あるけれど、やっぱり明日の方が大切だと思う。
 

父が飲んで家がめちゃくちゃだった頃、いつも、「死ぬよりはましだ」と自分に言いきかせていた。
 
でも今は、「生きていて良かった」と心から思う。
 
そう思える事は、すごく幸福だ。
 

ACの子供達、いいえ、全ての子供達は、幸福になる権利があるのだ。
 
親の犠牲になってはいけない。
 




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<カノコユリ>
断酒など まさかまさかの坂を越え 奇跡に似たり断酒十二年  



54.アルコール家庭で育った子の体験談
 
  「父がいた」(女性高1)





私は、昔から父とのいい思い出はあまりありませんでした。
 
父はいつも酔っぱらっているか、しんどいしんどいと顔をしかめ、青くなっているときが多かったのです。
 
酔っぱらっている時は、私は、顔を合わすのも、話をするのもいやでした。
 

家でそろってご飯を食べていた時、突然けいれんが起き、あわてて救急車で病院へ行き、やっと意識がもどったかと思うと「どうしたんや、ここどこや」と、平気な顔で言っていました。
 

それからもう一つは、仕事先の近くの病院へ入院していたとき、幻覚症状が起き、あわてて母がかけつけました。
 
その時は、母がだれだということすら、わかっていませんでした。
 
母は、大変ショックを受けて帰ってきました。
 
しかし、そんな時も、助けることもできない私は、自分に腹が立っていました。
 

それから後に、“断酒会“を知りました。
 
ここでの出会いが、はじめてだったのに、うれしくて、うれしくて、たまりませんでした。
 
私は、この方たちとの出会いを、ずっと前から待っていたような気がしました。
 
そこでアルコール依存症についていろいろ勉強しているうちに、以前の考え方が間違っていたことに、気づき、考え方を変えてみました。
 
すると、自分がすごく楽になりました。
 
そしていつも暗い気持ちでいたのが、明るい心を持てるようになっていました。
 
アルコールについてのことだけでなく、その他いろんな相談にのって下さるので、以前の一人で悩みをかかえていた私とは、全然違うようになりました。
 

今はもう、父はいません。
 
断酒会を知らずに逝ってしまっていたら、きっと私たちは、憎しみや怒りだけの気持ちだったと思います。
 
断酒会のみなさんと知りあうことができて、私たちはもちろん、父もきっと後悔していなかったと思います。
 

断酒会の行事で、父とはじめて、お酒抜きの旅行ができたことがすごく印象深く、父との一番の楽しい思い出となりました。
 

いつも私の心に父がついていてくれているのだと思って、これからも明るく元気にがんばっていこうと思います。
 




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<カンザキアヤメ>
見舞来て一人登りしこの坂を 断酒の君と「きずな」に向かう  


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