断酒会の危機的状況を打開するためには


 
                        ひがし布施クリニック 院長 辻本 士郎  
  

 バブルがはじけたのに、まだ断酒会は酒に酔っている。変わらなければ存続できないことに気づこう

 皆さんがご承知の通り、断酒会会員の減少は止まりません。
 
2002年度11030人の会員数が2013年度の全断連現状調査では8281人と2749人も減少し、25%も減少しています。
 
 そのため、全断連ではアクションプランを作成するなど対策をとってきましたが、その後も減少傾向は改善されていません。
 
 このまま減少が続くとどうなるのでしょう。
 
さらに悪循環が起こり、加速度的に減少することも考えられます。
 
 たとえば16人、これは1例会の平均出席者数ですが、16人で運営している会が将来25%の減少があると12人、40%の減少となると9.6人になります。
 
 そこで出てくるのは、まず、お金の問題です。
 
会費の収入が少なくなる、会場費などが払えない、会費を上げないとやっていけない、会の事務などの運営の負担が多くなる、会費の値上げで会を離れる人が出る、そのため会員がさらに少なくなるという悪循環です。
 
 もし、会場費が払えないために例会回数を減らす(たとえば毎週が月2回)となると、断酒会の魅力や活力が低下し、足で廻る断酒会ができなくなり、再飲酒する人が増え、断酒会を離れる人も多く出ると思います。
 
 断酒会は人の魅力、体験談の魅力で人を引きつけているのですが、例会の回数の減少は仲間とのふれあいの時間を減らすために、最も大切な仲間意識を弱め、自分の首を絞めるようなものです。
 

 また、新入会者の減少も会員減少以上に著明です。
 
新しい会員がいないと断酒会の力はどんどん落ちます。
 
長くやめている人だけの断酒会は新鮮さがなく、初心に戻ることが難しくなります。
 
断酒会は新入会員という新しい血(血液)で、毎回よみがえるのですが、今は活気や刺激を与えてくれる新人が減少していることも憂慮すべきことです。
 

 医者の立場から例えると、体重が60kgの人が現在45kgまで減少していると考えるとこれは異常であり、原因を追究しないと、思い切った治療をしないと、さらに悪化します。
 
さらに40%減を考えると体重が36kgまで減少してしまい、もう手を尽くすことが難しくなります。今、早急な対策が必要です。
 
 では、どうすればいいのでしょうか?それには大きな改革が必要です。
 
 私たちは東大阪アルコール関連問題会議で「アルコール問題があると思われ る皆様へ」というアンケート調査を大阪商業大学豊山教授の指導のもとに行い、断酒会会員と断酒会に入会していない患者さんとの比較を行いました。
 
 東大阪単独の調査で各地域とはことなる点が多いかもしれませんがご容赦ください。
 
ちなみに大阪府断酒会会員数は平成26年4月1日現在で938名、内東大阪断酒会会員数は85名です。
 
 患者さんのなかで断酒会未入会理由を聞くと@入会しなくてもクリニックだけで断酒できる、が最多で、次にA例会の雰囲気があわない、B対人関係に不安がある、C時間不適(時間があわない)などがありました。
 
断酒会退会理由は数的には多くないのですが、D断酒会の人間関係、Eおもしろくなくなった、F役員になってくれといわれた、G言いっ放し、聞きっぱなしが守られていなかった、などがあげられました。また、断酒会会員の中からの意見で、H行事が多すぎる、I役職者に対して拘束が強すぎる、J押しつけがましい、堅苦しいなどの意見もありました。
 
 また、AA参加者のAAへのプラス評価も聞きました。
 
 答えは、時間が短い、若者が多い、会費がない、組織的でない、堅苦しくない、気合と根性論を全く出さないところ、ステップなどで回復がはっきりしている等でした。
 
 これらは断酒会でも参考になるところです。
 
これらの回答は私が臨床で感じている点と共通することが多くあります。
 
クリニックでは自助グループに繋ぐ努力をしていますが、まだまだ十分にはできていません。
 
医療側の問題も多いと思いますが、今回は断酒会への提言に限定させていただきます。
 

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 ます、言いたいことは時代の変化から遅れていることです。
 
全断連誕生以来、多くの社会の変化、会員・家族の変化、医療機関の変化などがありました。
 
 過去には、断酒会会員は熟年世代の男性が多く、地域社会の中で親・子・孫が同居し、仕事人間が過重労働とともに大量飲酒を行いアルコール依存症に進行して、多くの行動障害を伴う「猛者」がいました。
 
戦争を経験している人も多く、断酒会仲間を戦友とみなし、厳格な規律に抵抗を感じない人が多かったと思います。
 
家族も必死で回復を願い、本人も断酒のためにはすべてを投げうって実践する人が多く、熱き情熱を持っていました。
 
そして断酒すれば仕事をするのが当たり前、家族の協力は当たり前の風潮がありました。
 
 この常識は若者には通用しません。
 
若者はドライで束縛を嫌います。仕事も平気で変わり、いやなことがあると逃げます。妻も逃げすぐ離婚します。いや結婚しない人も多くいます。
 
 その一方で、受けいれてくれる何かを求めています。
 
最初に断酒会の例会へ行ったが「老人クラブ」みたいや、堅苦しいと言ってAAに変わる人も多くいます。
 
今増えつつある女性も男性ばかりのところには行きたがりません。
 
 根性論などもってのほかです。
 

 断酒会の体質改善が必要で、その時に考えないといけないことは、いかに今までと違う価値観を持った若者や女性の新入会員を増やすかです。
 
 今までの強者の「男中心」の考えから、若者や女性の視点に立った「より生きづらい人を中心」とした断酒会へ意識の変革が、新しい血を流入させるためには必要だと思います。
 
 女性の登用は安倍内閣でも行われています。
 
全断連の役員に女性が何人いるのでしょうか。
 
今日のこの会場に何人いるのでしょうか。
 
 また、今の体制は現状を維持することに腐心をして、役職者に負担をかけ過ぎているようにしか見えません。
 
数多くの行事の中で努力の割に内容がないものはないでしょうか。
 
企業でもリストラしているように、現状を維持するのではなく、不要とはいいませんが古びた行事はやめて新人を獲得するために改革しませんか。
 
 AAでは「ようこそ、AAへ」という新人獲得の努力をしています。
 
新人を増やすために、受け入れやすくする方策が必要です。
 
待っていても新しい人は来ません。
 
新しい人をむかえに断酒会のメッセージを伝えましょう。
 
 もう一度、一人でも多くの酒害者を救うという松村初代会長の理念を取り戻しましょう。
 

 次は、あなたの断酒会に初めて参加した人に、また来たいと言う魅力がありますか?と自分に問いかけてください。
 
自分と同じ体験をした人がいる、同じどうしようもない苦しみを乗り越えた人がいる、またあの人に会ってみたい、また来ようと、断酒会が醸し出す雰囲気が人を引き付けます。
 
 例会時間、例会へのアクセスのしやすさ、人数、多様な人がいて受け入れられる態勢、居心地の良さ、安心感などにも気をつけましょう。
 
「言いっ放し、聞きっぱなし」も分かりつらく、もっと実効性のあるわかり易いルールの中で批判や非難がなされない、人間関係を壊さない、誰一人も傷つけない工夫ができないでしょうか。
 
昼例会などで参加しやすく、去りがたい断酒会になることを期待します。
 

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 では断酒会はだめなのでしょうか。
 
違います。
 
期待しているからこそ苦言を呈しているのです。
 
断酒会の理念の中に魅力はたくさんあります。
 
 まず、断酒会に参加しないでクリニックだけでやめている人と断酒会会員では、回復の仕方や幸福度が違います。
 
断酒会が「単に断酒するためだけの会」なら違いは大してありませんが、断酒会は仲間を作り、生き方を変えて豊かな新しい人生を作り、他の酒害者のために役立つミッションのためにあるのです。
 
 断酒新生指針にはそのことが7項目で明記されています。
 
断酒会に入らず酒をやめていても、酒への依存がクリニックへの依存に変わっただけで7項目のうちの2〜3番目までの中途半端な回復です。
 
孤独で喜びもなく生きがいに欠けます。
 
若者と同じく何かを求めているのですが、それを断酒会がくみ上げられないのです。
 
断酒会会員が、第2の否認の回復を克服することはとても魅力的です。
 

 また、断酒会の魅力は家族の参加があり家族の体験談が聞けるところです。
 
 しかし家族会が衰退しているとしたら大きな痛手です。
 
働いている家族でも、小さい子どもがいる家庭でも参加しやすい断酒会へ、時間帯などを配慮することや、家族は本人に尽くすのが当たり前で断酒会の指示に従うべきという古い風潮をなくすことを徹底すること、準会員という言葉が表わすように主役でない家族を会員以上に大切にする改革、家族だけで安心して交流できる場の確保などの対応が求められます。
 
また、単身者の多い地域では今までの「家族同伴参加モデル」の再考も必要かもしれません。
 

 昨年6月、アルコール健康障害対策基本法が施行されました。
 
断酒会が変わる絶好のチャンスです。
 
しかし、過大な期待を持ちすぎたり、金銭や名誉慾で内部抗争が起きたり、行政に取り込まれ自分たちの理念を逸脱したり、身の丈以上のことをしすぎるとチャンスがピンチになります。
 
 まず、期待されることは治療を受けやすくし、潜在的な患者層の掘り起こしです。
 
 SBIRTなどの活用で受診者は増え、自助グループへの紹介も増えるでしょう。
 
 その時、行動障害の少ない「静かなアルコール依存症者」がいわゆる「猛者のはなばなしい体験談」を聞いて自分と違うと思うことがないでしょうか。
 
 酒でどうしようもなかった自分の体験という意味では同じですのでそれを共通語として語る場にしてほしいと思います。
 
断酒会の受け入れ態勢の変革が急がれます。
 
 また、会員数が増えると役員の負担も大きくなります。
 
事務負担だけでも大 変です。
 
ますます役員の成り手がいなくなります。
 
 もし3倍の会員が増えると言う事は、医学で例えると60kgの体重が180kgの体重となります。
 
その時の対応ができるように、基本法第21条には「自発的な活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする」と書かれていますが、具体的な支援の中に役員の負担を減らすための施策がなされることも願います。
 
 そして、基本法は断酒会だけの法律ではありません。
 
 AAなどの自助グループも同じ立場で支援をうける平等性が問われます。
 
 もし 断酒会の中で分派的なものがあると、行政は支援をためらうかもしれません。
 
 大阪は断酒会が分裂することなく進んできましたので他地域については知りませんが、もし全断連未加入の断酒会があれば早急に解決する問題です。  以上、耳の痛いことを数々のべましたが、「いつする、今しかないでしょう」を再度お願いし、私の提言といたします。
 
ありがとうございました。



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   断酒会「松村語録」より

   仲間の体験をよく聞き、自分の断酒を再確認しよう
     

                        *松村春繁 全日本断酒連盟初代会長(S38.11設立) 
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